翻訳|viscose
ビスコースレーヨンをつくるための溶液。これは高粘度(英語でビスカスviscous)のセルロース誘導体の溶液であるため,ビスコースと名づけられた。セルロースは,グルコース(ブドウ糖)から水がとれて重合体になった構造をとっている。セルロースを苛性ソーダと反応させると,2位の水酸基がONaになったアルカリセルロースを生成する。これを二硫化炭素と反応させると,セルロースキサントゲン酸ナトリウムが得られる。これを,希薄な苛性ソーダ水溶液に溶解する。溶液は熟成すると,初めは粘度の低下が起こり,さらに時間が経過すると粘度が上昇して元の粘稠な溶液に戻る。
セルロース原料としては木材パルプが使われる。高分子であるセルロースはある重合度(式ではnで表されている)をもつが,ビスコースレーヨンの製造プロセスではセルロース主鎖の切断は避けられず,重合度は約1/4に低下する。ビスコースを硫酸紡糸浴へ入れると,セルロースが再生される。
→セルロース
執筆者:瓜生 敏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
セルロースキサントゲン酸ナトリウムを水酸化ナトリウムの水溶液に溶かした橙赤(とうせき)色の粘い液体。木材を精製した「溶解パルプ」に約18%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて室温で数時間置き、圧搾してアルカリセルロースを得る。得られたアルカリセルロースを粉砕し、二硫化炭素を加えて加熱するとゼリー状のセルロースキサントゲン酸ナトリウムが得られる。これを水酸化ナトリウムの水溶液に溶かし、濾過(ろか)してビスコースを得る。セルロース約8%、水酸化ナトリウム約6%を含む。
ビスコースは黄色の液体として得られるが、しだいに粘度の高い赤褐色の溶液に変化する。ビスコースをノズルから希硫酸浴中に押し出すと、セルロースキサントゲン酸ナトリウムが分解して元のセルロースに戻って、ビスコースレーヨンが得られる。ビスコースからセロファンやスポンジもつくられる。以前、人造繊維として使われていたビスコースレーヨンのことを「人造絹糸」とよんでいたが絹糸とは成分が異なる。
[加治有恒・廣田 穰 2015年7月21日]
セルロースキサントゲン酸ナトリウムを希水酸化ナトリウム水溶液に溶かした粘ちゅうな溶液をいう.リンターパルプまたは溶解パルプをアルカリセルロースとし,老成後,二硫化炭素を加えて硫化し,希水酸化ナトリウム水溶液を加えるとビスコースが得られる.ビスコースは,本来,無色あるいは淡黄緑色であるが,反応の副生成物のため赤褐色をしている.また,不安定で,放置すると経時的に変化する.ビスコースを紡糸口金から凝固浴中に射出すると,セルロースキサントゲン酸ナトリウムは分解し,セルロースが再生する.これがビスコースレーヨンである.紡糸口金のかわりにスリットから射出して得られるフィルムを脱硫,漂白し,グリセリンあるいはエチレングリコールなどの柔軟剤を添加したのち,乾燥するとセロハンがつくられる.[別用語参照]セルロースキサントゲン酸塩,再生セルロース
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…アセテートacetateは1894年からイギリスで研究され,第1次大戦中に工業化された。ビスコースviscoseは原料にセルロースを主成分とする亜硫酸パルプを,ベンベルグはそれより高価なコットンリンターまたはセルロース含有量の高い木材パルプを原料に用いる。いずれもセルロースを反応させて溶液とし,紡糸口金から凝固浴へ押し出してセルロースへ戻して紡糸する。…
…長繊維を人絹,短繊維(ステープルファイバー)をスフと呼ぶ。ビスコース人絹,銅アンモニア人絹および酢酸繊維素人絹(アセテート)が作られている。絹糸に似た繊維を作るのは化学者の夢であって,1882年に硝化法人絹が発明され,92年にビスコース人絹(ビスコースレーヨン)が作られ1904年に工業生産に移され,今日でも世界各国で大量に作られている。…
※「ビスコース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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