ビルダー(英語表記)builder

翻訳|builder

改訂新版 世界大百科事典 「ビルダー」の意味・わかりやすい解説

ビルダー
builder

セッケン,合成界面活性剤などに,その洗浄性を向上させ,加工,保存性を改良し,かつ増量剤として経済的効果をも与えるものとして加える添加剤。ビルダー自体にはほとんど洗浄作用はないが,洗剤と共用することにより,(1)洗濯液のpHを維持し,(2)アルカリ性ビルダーではセッケンの加水分解を防ぎ,汚れの脂肪酸をセッケンとし,(3)酸性ビルダーでは金属酸化物を溶かし,(4)洗濯液-油の界面張力を減少させ,油状汚れの脱離を促す,(5)ミセル形成濃度を低下させて,界面活性剤のミセル形成を促進し,またその表面特性を改善する,(6)洗浴中に脱落した汚れの再付着を防止する,(7)硬水を軟化する,などの役割をする。ビルダーには無機ビルダーとして,炭酸ナトリウムセスキ炭酸ナトリウム(工業用),ポリリン酸塩トリポリリン酸塩,ケイ酸塩,硫酸ナトリウムボウ硝),ベントナイトゼオライトなどがある。とくにリン酸塩系は合成洗剤のビルダーとしての性能がすぐれるため多用されたが,廃水による富栄養化から使用が避けられるようになり,現在,家庭用洗剤はほとんどゼオライト系に代替されている。有機ビルダーとしてはカルボキシメチルセルロースCMC)が代表的なもので,洗浄性の向上,再付着の防止とともに,香料染料分散剤,固着剤としても作用する。これらビルダーは実際には複合して使用されることが多い。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビルダー」の意味・わかりやすい解説

ビルダー
びるだー
builder

繊維用合成洗剤の洗浄力を高めるために加えられる薬剤。洗浄促進剤と訳されることもある。初期には炭酸ナトリウムやケイ酸ナトリウムおよび過ホウ酸ナトリウムなどが用いられた。合成洗剤が発達するにつれて、一般の家庭に電気洗濯機が急速に普及し、家事に費やされる主婦の労力は大いに軽くなった。続いて新しいビルダーとして、硬水中でも不溶性の沈殿が生成しないトリポリリン酸ナトリウムが登場した。これをABSあるいはLAS(ラス)洗剤に全体の20~30%加えると、洗浄力が優れ、繊維に汚れが再付着せず、また布が黄変しないなどの性質が得られた。しかし、この洗浄廃水が河川や湖沼に放流されると、そのリン成分が栄養分として作用し、湖沼や、水が停滞しがちな水域では富栄養化をおこし、水質を悪化させるおそれがある。日本では1980年(昭和55)に琵琶(びわ)湖の水質汚染の進行を防止する目的で、滋賀県で、リンを含むビルダーの使用を禁止し無リン洗剤の使用を初めて義務づけた。これをきっかけとして無リン洗剤が急速に普及し、現在では家庭用合成洗剤のほとんどすべては無リン化されている。この場合にはトリポリリン酸ナトリウムにかわるビルダーとして、固体のイオン交換体であるゼオライトAが加えられている。

[早野茂夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「ビルダー」の解説

ビルダー
ビルダー
builder

合成洗剤やせっけんなどで,主体である界面活性剤の洗浄効果を高めるために加えられる補助成分の総称.界面活性剤の界面活性を増大する作用のほか,硬水軟化作用,溶解性の向上,製品形態の安定化など種々の効果を有し,これまでも有機・無機の多くの物質が試みられてきたが,合成洗剤用ビルダーとしてはトリポリリン酸塩(三リン酸(塩))が種々の点でもっともすぐれ,大量に製造,使用されてきた.しかし,洗濯排水の流入がリン分による河川や湖の富栄養化の原因の一つとされ,社会問題にもなった.そこで,これにかわるものとしてビルダー用の合成ゼオライトが開発製造され,さらに層状や無定形のアルミノケイ酸塩,あるいは結晶性シリケートといった,より高性能なものが開発されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のビルダーの言及

【合成洗剤】より

…商品としてはこれらの界面活性剤を混合することにより洗浄力を上昇させ,またその濃厚液を安定化させるためにエチルアルコール,尿素,トルエンスルホン酸塩等の溶解補助剤hydrotropeを加え,さらに粘度調節用の増粘剤,乳濁剤,香料,着色剤,手荒れ防止剤等を加えている。なお自動皿洗機用には,さらにビルダー,殺菌漂白剤を加える。(2)シャンプー用洗剤 洗浄力がすぐれているために,おもに陰イオン界面活性剤を用いる。…

【洗濯セッケン(洗濯石鹼)】より

…原料としてはヤシ油25~40%および牛脂硬化油などを60~75%配合して作られる。通常,中性のマルセルセッケンが最良であるが,洗浄力向上のためにケイ酸ナトリウムを主としたビルダーを加える。粉状のものでは,主として価格の点および溶解性をよくする目的で液体油脂,とくに米ぬか油などの不飽和度の高い油脂を中心に,牛脂,ヤシ油などを用い,タイター(混合脂肪酸の融点)が30℃くらいになるように配合する。…

※「ビルダー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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