ピカレスク小説(読み)ピカレスクショウセツ(英語表記)picaresque novel

デジタル大辞泉 「ピカレスク小説」の意味・読み・例文・類語

ピカレスク‐しょうせつ〔‐セウセツ〕【ピカレスク小説】

ピカレスクは、picaresque》⇒悪漢小説あっかんしょうせつ

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精選版 日本国語大辞典 「ピカレスク小説」の意味・読み・例文・類語

ピカレスク‐しょうせつ‥セウセツ【ピカレスク小説】

  1. 〘 名詞 〙 ( ピカレスクは [英語フランス語] picaresque ) 小説の題材上の区別一つ。主に悪漢主人公とし、その性格行動犯行を叙述したもの。また、そういう傾向の小説。一六~一七世紀にスペインで流行したものを初めとする。悪漢小説
    1. [初出の実例]「一つはスペインの悪者(ピカレスク)小説や『ドン・キホーテ』」(出典:現実拒否の文学(1956)〈大井広介〉二)

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知恵蔵 「ピカレスク小説」の解説

ピカレスク小説

社会の下層に位置する主人公が、一人称で自己の遍歴や冒険を物語る小説形式。挿話を重ねていく構造を持ち、時間、空間がパノラマ式に変転していくのが特徴。ピカレスクとは、「悪党」「ごろつき」の意のスペイン語ピカロ(picaro)より。最初のピカレスク小説は、作者不明の『ラサリリョ・デ・トルメスの生涯』(1554年)であるとされる。ピカレスク小説はまず、トマス・ナッシュ『不運な旅人』(1594年)によってイギリスに導入され、以後、16世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパ全土に広がり、ドイツのグリンメルスハウゼン『阿呆物語』(1669年)、フランスのアラン・ルネ・ルサージュ『ジル・ブラース物語』(1715〜35年)、イギリスのダニエル・デフォー『モル・フランダーズ』(1722年)などを生んだ。19世紀以降、ピカレスク小説は、ことにアメリカ小説の構成原理として有効に働き、マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』(1885年)から、J.D.サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』(1951年)まで、数々の秀作を世に送った。日本において、ピカレスク小説がおおむね大衆文学の領域にとどまっているのは、日本人がヒーローに求める条件たる倫理や知性が、そもそもピカロの持ち合わせぬものであるからなのだろう。

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

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改訂新版 世界大百科事典 「ピカレスク小説」の意味・わかりやすい解説

ピカレスク小説 (ピカレスクしょうせつ)

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とっさの日本語便利帳 「ピカレスク小説」の解説

ピカレスク小説

悪漢小説。一六世紀のスペインの小説『ラサリーリョ・デ・トルメス』(作者不明)を起源とする写実主義小説の一様式で、悪漢を主人公とし、特に一八世紀の英国で流行した。

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百科事典マイペディア 「ピカレスク小説」の意味・わかりやすい解説

ピカレスク小説【ピカレスクしょうせつ】

悪者(わるもの)小説

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