建物の1階部分が吹放ちの空間になるように建物上部を支持している独立柱。さらに広く,こうした独立柱群によって作られた,建物基部の,開放的な空間全体をいうこともある。もともとは,フランス語で建物を支持する杭を意味する語であったが,1920年代より,ル・コルビュジエが近代建築の新しい方法として主張したことに伴って一般化した。すなわちその主張とは,近代都市においては,地上は歩行者や自動車のために開放されるべきであり,そのためには近代建築はピロティをもつべきであるという考えである。日本においてピロティが初めてはっきりした姿で現れたのは,丹下健三設計による広島平和記念陳列館の建物(1955)においてであり,その後,小住宅から大公共建築にいたるさまざまな建築物において,広く用いられている。とくに日本においてピロティが好んで用いられている理由は,先のル・コルビュジエの主張が受け入れられたことに加えて,ピロティの造型と日本の伝統的高床式建築との親近性,ピロティの空間と日本的な流動的な空間との親近性も大きい条件と考えられる。
執筆者:香山 壽夫
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もともとフランス語で建物を支持する杭(くい)を意味するが、近代建築の用語としては独立柱が建物を支持する吹き放しの部分をさす。ル・コルビュジエが提唱した近代建築の五原則の一つで、建物を大地から持ち上げることによって地上を解放し、空間的連続性を獲得して自由な交通を可能にしようとする造形である。彼の設計になるポワッシーのビラ・サボワ(1931)やパリの国際大学都市のスイス学生会館(1932)が初期の例であり、マルセイユのユニテ・ダビタシオン(1952)で大規模に採用されている。
[前川道郎]
なお、ビラ・サボワとユニテ・ダビタシオンは、2016年、「ル・コルビュジエの建築作品:近代建築運動への顕著な貢献」の構成資産の一つとして、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産の文化遺産に登録された(世界文化遺産)。
[編集部 2017年2月16日]
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… 近代建築の成立とともに,柱の表現は即物的なものとなり,柱基や柱頭の明確でない直方体もしくは円柱形の柱が多用されるようになる。一階を柱だけで支えて地面を開放するピロティの手法に代表されるような,構造支持体としての柱の表現が強まり,鋼材の形状をそのまま柱に用いる等の例も多くみられる。その一方で,柱が壁体による支持形式の対極をなす,象徴的な支持形式であることを意識した造型表現も根強く存在している。…
…すでに1914年〈ドミノ・システムDomino system〉を発表,コンクリート造の柱と床に荷重を受け持たせ,壁を自由にした近代建築の構造原理を示した。さらに22年,〈近代建築の5原則〉を発表し,ピロティ,独立骨組み,自由な平面,自由な立面,屋上庭園こそ近代建築の備えるべき特色であると指摘する。また,家は〈住むための機械machine à habiter〉であると語り,近代建築理論を導いた。…
※「ピロティ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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