キリスト教的ヨーロッパ世界が生んだ最初の偉大な数学者。レオナルド・ダ・ピサLeonardo da Pisa,レオナルド・ピサーノLeonardo Pisanoともいう。地中海地域の商業活動に携わるかたわら,高度に発達したアラビア数学の技法を身につけ,後世に大きな影響を与える著作を書いた。その名声は,時の神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒ2世にも届き,晩年にはピサ共和国から〈卓越し学識あるレオナルド〉の名を与えられ,年金を供与されたことが記録に残されている。主著《アバクスの書Liber abaci》(別称《算術の書》。1202,1228改訂)は,インド・アラビア式数字(今日の算用数字)による筆算法をヨーロッパ世界に伝えた画期的な書物である。その最終章は,フワーリズミーやアブー・カーミルの二次方程式論を取り扱っている。アラビアの代数学を伝えた点で,彼はヨーロッパ後期中世の商業用代数学(コス式技法)の祖とみなされる。《実用幾何学》は,測定問題のみでなく,証明問題をも考察している。《精華》《平方の書》は,高度な数論的問題を扱った独創的な著作で,例えば二次の連立不定方程式を解いている。《アバクスの書》は多くの後継者をもち,後のヨーロッパ数学を,算術的,代数的なものにするのに大きな力を発揮したが,独創的な《精華》《平方の書》は,ほとんど読まれることなく終わった。ヨルダヌスN.Jordanusとともに,13世紀の孤高の数学者ぶりを示しているといってよい。
執筆者:佐々木 力
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中世イタリアの数学者。ピサの貿易商ボナッチの子で、フィボナッチはボナッチの息子の意の俗称。レオナルド・ピサーノLeonard Pisanoともよばれる。商人として計算法を学び、商用も兼ねて各地を遍歴し、アラビア数学の知識を得た。
1202年『算術の書』を著し、後年改訂増補して大著『そろばんの書』Liber Abaciとした。この本はインド・アラビア式記数法、計算法、比例算から、級数や不定方程式にまで及ぶ。有名なフィボナッチ級数(フィボナッチ数列ともいう)は、1対のウサギがnか月で何対になるかというウサギの増殖問題としてその第12章に扱われている。ヨーロッパ各国で広く読まれ、位取り記数法の普及をはじめ、ヨーロッパの数学の発展に大きな影響を与えた。
ことばによる記号を使わない代数学は当時の水準を超えた優れたもので、むしろ15~16世紀の数学者に受け継がれた形である。1225年には神聖ローマ帝国のフリードリヒ2世の挑戦を受けて数学の試合を行い、二次方程式や三次方程式の近似解を求めた。そのほか、幾何学や数論の著作もあり、傑出した学者であった。
[一松 信]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…8世紀にはイスラム文化は地中海東部よりスペインにも及ぶようになるが,11世紀より13世紀にかけ,キリスト教徒は十字軍を組織して東方に遠征し,そこでも東西文化の接触が起こる。13世紀のフィボナッチ(ピサのレオナルド)は東方に旅行したイタリアの商人であるが,アラビアで行われていた計算技術や代数学を含む《算盤の書》(1202)を著した。そのころから代数学がイタリア,ついでヨーロッパ全土に知られ,漸次発達するようになる。…
…ローマ数字を使っていたヨーロッパ人は,平行線を引いた板上で日本のそろばんと同じように小円板を動かして計算をしていた。ピサの商館員フィボナッチは,0と位取りの原理をもつインド数字を使うアラビア人の計算法の本を出版した(1202)。この筆算は漸次ヨーロッパに広がり,200~300年の間にそろばん風の計算法は大陸の大部分から姿を消した。…
※「フィボナッチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新