日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェニックス(不死鳥)」の意味・わかりやすい解説
フェニックス(不死鳥)
ふぇにっくす
phoenix
古代エジプトの想像上の鳥で、不死鳥と訳される。フェニックスはアラビアまたはフェニキアにすみ、史家タキトゥスによれば、500年ごとに太陽の都ヘリオポリスを訪れ、生命の終わりが近づくと、香木を山と重ねて火をつけ、自らを焼き、たえなる歌声とともに死に至るといわれている。そしてその灰の中からよみがえるのが次代のフェニックスであり、同時に二羽のフェニックスはこの世に存在しない。
ギリシア語のフォイーニックスは、フェニキア、紫、ナツメヤシの三つの意味をもつ。そこで、生地はフェニキア、王者の色として紫の色を身にまとうといい、勝利のシンボルとしてのナツメヤシと同一視される。オウィディウスによれば、フェニックスは一般の鳥が食べる草や実を食せず、香木の樹液を飲み、500年ののちにシュロの木に巣をつくり、香木を集めてその上で身を焼き、その身体から生じた幼鳥が巣を太陽の都へ持ち運び、ヒュペーリオンの神殿の前に置くという。キリスト教のシンボルとしては、再生するキリストを表し、一般にはその不死の姿から薬屋の看板として長く用いられてきている。イギリスのエリザベス1世はフェニックスをメダルに刻ませていた。
[船戸英夫]