フォスファターゼ(英語表記)phosphatase

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

フォスファターゼ
ふぉすふぁたーぜ
phosphatase

リン酸エステル(ヒドロキシ基をもった化合物とリン酸が脱水結合したもの)を加水分解する酵素の総称。どのような形のリン酸エステルを分解するかによって次の(1)~(3)に分類される。
(1)リン酸モノエステル加水分解酵素は R-O-P+H2O→R-OH+OH-Pの反応を触媒するもので、国際生化学連合(現在は国際生化学・分子生物学連合)の酵素委員会が制定した酵素番号はEC3.1.3である。
(2)リン酸ジエステル加水分解酵素は R-O-P-O-R’+H2O→R-OH+OH-P-O-R’の反応を触媒するもので、酵素番号はEC3.1.4である。
(3)トリリン酸モノエステル分解酵素は R-O-P-P-P+H2O→R-OH+OH-P-P-Pの反応を触媒し、酵素番号はEC3.1.5である。(Rは有機化合物残基、PはPO3-2
 狭義のフォスファターゼはリン酸モノエステル加水分解酵素をさす。これに属するものにはヌクレオチド(ある種の有機塩基と糖とリン酸が結合したもの)をヌクレオシドとリン酸に加水分解する5'-ヌクレオチダーゼ、糖質のリン酸エステルを加水分解するグルコース6-フォスファターゼ、リン酸化タンパク質を加水分解するフォスフォプロテインフォスファターゼなどがある。その他、比較的特異性が低いものもある。最適pH(ペーハー/ピーエイチ)(水素イオン濃度)が10付近のアルカリフォスファターゼ、最適pHが5付近にある酸性フォスファターゼなどである。グルコース6-フォスファターゼはグルコース6-リン酸からグルコースを生成する酵素で、微生物から高等動・植物に広く分布するが、高等動物では肝臓に多く、筋や脳に存在しない。肝や筋に貯蔵されたグリコーゲンが分解するとグルコース6-リン酸が生成する。これは肝ではグルコース6-フォスファターゼによりグルコースとなり血糖値の上昇に役立つ。しかし、筋ではグルコースにはならずに解糖系に入りエネルギー源として使われる。また、フォスフォプロテインフォスファターゼは、細胞内のシグナル伝達の主要なメカニズムである、タンパク質の可逆的なリン酸化や脱リン酸化において重要な役割を担っている。
 リン酸ジエステル加水分解酵素に属するものには、フォスファチジルコリン(レシチンともいう)をジアシルグリセロールとフォスフォコリンに加水分解するフォスフォリパーゼC、フォスファチジン酸とコリンに加水分解するフォスフォリパーゼDなどがある。
 トリリン酸モノエステル分解酵素に属するものには、デオキシグアノシン3-リン酸をデオキシグアノシンとトリフォスフェイトに加水分解するデオキシグアノシントリフォスファターゼがある。ATP(アデノシン三リン酸)をADP(アデノシン二リン酸)とリン酸に、あるいはATPをAMP(アデノシン一リン酸)とピロリン酸に加水分解する酵素は酵素番号EC3.6の酸無水物に作用する酵素に分類される。[徳久幸子]
『D. Grahame Hardie編、日高弘義監訳、石川智彦他訳『プロテインキナーゼとホスファターゼ』(1995・メディカル・サイエンス・インターナショナル) ▽田村真理・矢倉英隆・武田誠郎・宮本英七編『プロテインホスファターゼの構造と機能』(2000・共立出版) ▽的崎尚監修「特集 解明が進むプロテインホスファターゼ その新機能から疾患への関わりまで」(『細胞工学』2004年5月号所収・秀潤社)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

フォスファターゼ

〘名〙 (phosphatase) エステラーゼの一種。有機燐酸エステルおよびポリ燐酸の加水分解を触媒する酵素の総称。

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