双安定マルチバイブレーターのこと。対等な二つの安定状態をもつので,二進的ディジタル電子機器のもっとも重要な構成要素となる。スタティック半導体メモリーを使用するコンピューターはその80%以上がフリップフロップ回路の集合体である。メモリー用のフリップフロップ回路はトランジスターを2個組み合わせた簡単なものである(図1)。論理回路用は以下に示す各種のものがあるが,それらは,NAND(ナンド)ゲートやNOR(ノア)ゲートを環状に接続した図2の回路が基本構造となる。入力がなければ一方のゲートが高いレベル(正論理で1を表す),他方が低いレベル(正論理で0を表す)で安定状態を保つ。NANDゲートにより構成された回路でその動作を説明する。セット端子Sが低レベルの0になれば,出力Qは必ず高いレベルとなり,この回路は1にセットされる。NOR構成の場合は高いレベルの入力でQは1となる。リセット端子Rに高レベルの1が入力されればQは0となる。これをR-Sフリップフロップという。RとSに同時に入力が印加されると出力は不定となる。クロック入力とのNANDをとって同期させ,入力1で動作するようにしたときの回路構成と真理値表を図3に示す。図4のようにS入力の反転出力でR入力を無効にすれば,RとSの同時入力があってもSだけを有効にでき,禁止条件を除くことができる。これをセット優先フリップフロップという。図4からリセット入力を除き,図5のようにクロック入力がつねに加わるようにすると,データ入力Dの値がクロックパルスごとにセットされるフリップフロップとなる。これがDフリップフロップで,情報を1クロック遅延させることにもなりラッチ回路としても使われる。入力が1ヵ所で,1が入力されるごとに状態が反転するようにしたものをTフリップフロップという。また入力端子を2ヵ所もち,それぞれはR-Sフリップフロップと同様な機能をもつが,同時に1が加えられたときはTフリップフロップと同様な動作となるものをJ-Kフリップフロップと呼んでいる。その動作を図6に示す。またT入力を別にしたR-S-Tフリップフロップもある。さらに以上の各種類の動作を確実にするため,入力受入れと出力送出を担当する2組のフリップフロップを組み合わせ,それらを時間的にずらせて動作させることがある。これをマスタースレーブ方式フリップフロップと呼ぶ。各種のレジスターは上記の各種フリップフロップを組み合わせて作られる。
→マルチバイブレーター
執筆者:川又 晃
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マルチバイブレーターの一種。双安定マルチバイブレーター、または二安定マルチバイブレーターという。
[編集部]
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… 半導体メモリーは素子の種類によってSRAM(スタティックRAM,エスラム),DRAM(ダイナミックRAM,ディーラム)などに分類される。SRAMは,シーソーのような二つの安定状態をもつフリップフロップ回路によって,1ビットの情報を電圧のかたちで記憶する。DRAMは情報をコンデンサー上の電荷の有無のかたちで記憶する(図1-a参照)。…
…一方の安定状態を定める入力が加えられると,次に他方の安定状態を定める入力が加えられるまでその状態を保持する回路となる。この回路が双安定(2安定)マルチバイブレーターで,一般にフリップフロップ回路と呼ばれ,二つの安定な状態をそれぞれ二進情報の1あるいは0に対応させて1ビットを記憶させることができ,ディジタル論理回路のもっとも重要な基本回路である。状態を反転させる入力のことをトリガー入力と呼ぶ。…
※「フリップフロップ回路」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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