フルクサス(英語表記)fluxus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

フルクサス
fluxus

1960年代初頭から,イベントを中心に,日常的空間を異化するような「行為」を表現形式として,さまざまなジャンルで活動した前衛的芸術家たちのグループ。ニューヨーク,ケルン,コペンハーゲンなど欧米の各地で活動を展開。参加した芸術家は G.マチューナス,J.ボイス,N. J.パイク,G.ブレクト,W.フォステル,O.ヒギンズ,L. M.ヤング,B.ヴォーティエ,J.メカス靉嘔小杉武久小野洋子など多数に上る。一度限りの表現がほとんどで,記録の形でしか活動の跡をとどめていないが,その後の環境芸術,概念芸術に測りしれない影響力を及ぼした。 63年5月ニューヨークでの「メイタイム・フェスティバル」が特に有名。 72年に回顧展として「クルックス・ショー」がイギリス・ドイツを巡回した。

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百科事典マイペディアの解説

フルクサス

1960年代の初頭からニューヨークを中心にヨーロッパや日本など世界的な規模で展開された反芸術的な運動。既成の表現形式に叛旗を翻し,ハプニングやイベントなど一時的な行為に重点を置く。リトアニア移民ジョージ・マチューナス〔1931-1978〕を中心として美術家,音楽家,詩人などジャンルを超えた集団であるが,メンバー構成は流動的で,数多くの表現活動に携わる人々が関わっていた。そのなかにはジョージ・ブレクト,ウォルフ・フォステルの他に,小野洋子(ヨーコ・オノ)〔1933-〕,ヨーゼフ・ボイス,ナムジュン・パイク靉嘔(あいおう),久保田成子,小杉武久〔1938-〕らがいた。彼らの活動は,一回限りの発表が多いため,写真やビデオなどの記録媒体を通して概観するしかない。1980年代に入ってフルクサスの活動への関心が高まり,1988年にはフルクサス関連の印刷物をまとめた《フルクサス・コデックス》が上梓されている。
→関連項目メール・アート

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世界大百科事典 第2版の解説

フルクサス【Fluxus】

1960年代に,ハプニングを表現形態として活動を行った国際的な芸術家のグループ。名称はラテン語に基づき〈流体の〉〈崩壊途上の〉などの意。その前史として,作曲家J.ケージを中心に1950年代アメリカで見られたハプニングの原型をなす催しがある。同グループはニューヨークを本拠に,ドイツ各地(ケルン,ウィースバーデンデュッセルドルフなど),パリ,コペンハーゲンなどで活動を展開した。〈きまじめな芸術とその諸制度,ヨーロッパ中心主義,芸術の専門性とエゴに反対する〉立場を取り,美術およびその周辺領域(音楽,演劇,文学,新しい諸メディア等)にまたがる多様なハプニングを行い,1950年代後半以降のネオ・ダダ的な芸術運動の一つの中心をなした。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

フルクサス
ふるくさす
Fluxus

1960年代を中心にニューヨークで展開された表現運動。1961年、ジョージ・マチューナスGeorge Maciunas(1931―1978)によって命名された。フルクサスということばは、流れ、不断の変化、排泄(はいせつ)物の放出などの意味をもつ。その名のとおりメンバーも活動も流動的で、1970年代初頭までに、ラ・モンテ・ヤング、小野洋子(オノ・ヨーコ)、ヨーゼフ・ボイス、ナム・ジュン・パイクといった各国のアーティストが入れかわりながらかかわりをもち、イベント、コンサート、出版など、ジャンルを超えたさまざまな表現を行った。芸術家の特権的な独創性を否定しようと試みたり、表現のうちに悪ふざけをもち込んだりと、その活動は、高尚かつかけがえのないもの、という既存の芸術概念を攪乱(かくらん)する側面を強くもった。この意味でフルクサスは、同時代におこったネオ・ダダやハプニングといった美術界の動きに連動するものである。とくに、アーティストが提供したアイデアに基づき、意味や価値をもたないささやかなものを箱に詰め合わせ、廉価に通信販売した一連の作品は、この運動の性質を示す一例であろう。幅広いその活動は、運動終息後もコンセプチュアル・アートやパフォーマンスに影響を与えた。[蔵屋美香]

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世界大百科事典内のフルクサスの言及

【パフォーマンス】より

… ダダがそうであったように,1960年代のパフォーマンスは,芸術家たちの非常に柔軟な相互関係によって成り立っていた。パフォーマンスを行うグループや場所は流動的であり,61年にジョージ・マチューナスGeorge Maciunasがパフォーマンスの専門誌を作るために考え出した〈フルクサスFluxus〉(雑誌は実現しなかった)は,やがて当時のパフォーマーを横断的に結びつける国際的な組織の名になったが,ラテン語で〈流れ〉を意味するfluxusと英語のflux us(われわれを融合する)とをかけたこの語は,当時のパフォーマーの流動的な関係にふさわしいものであった。このことは,ニューヨーク美術界の刺激を受けて活気づいていた〈読売アンデパンダン展〉(日本アンデパンダン展)出品作家たちの活動と,ケージに学んだ一柳慧(いちやなぎとし)や小野洋子らの媒介でしだいに日本にも形成されはじめたさまざまな芸術グループにもあてはまる。…

※「フルクサス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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