改訂新版 世界大百科事典 「ブチルゴム」の意味・わかりやすい解説
ブチルゴム
butyl rubber
イソブチレンと少量のイソプレンを,塩化アルミニウムを触媒として-100℃というきわめて低い温度でカチオン共重合させて得られる合成ゴム。イソブチレン・イソプレンゴムisobtylene-isoprene rubber(略称IIR)ともいう。ブチルゴム中のイソプレン含有率は0.6~3モル%で,これによってゴム分子鎖内に炭素-炭素二重結合を導入し硫黄加硫を可能にしている。各種気体の透過性がきわめて低いことがIIRの最大の特徴である(室温における窒素ガスの透過性は天然ゴムの1/10程度)。この性質を利用して自動車タイヤのインナーチューブ用ゴムとして使用される。また,耐候性,耐熱性,耐オゾン性,電気絶縁性にもすぐれ,自動車用ラジエターホース,電線被覆などにも使用される。また,反発弾性がゴムの中では最も低く衝撃吸収性に富んでいるので,各種の衝撃吸収材としても使用される。加硫性,他種ゴムとの相溶性,共加硫性,接着性などを改良するため,少量のハロゲンを導入したハロゲン化ブチルゴムも生産されている。臭素化IIR,塩素化IIRなどがこれである。最近タイヤのチューブレス化が進んだが,その空気保持性の要求からチューブレスタイヤのインナーライナーにはこれらハロゲン化ブチルゴムが使用されている。ブチルゴムは気体透過性が低いという特性を生かした用途以外では,エチレン・プロピレンゴムの用途分野と重複することが多い。
執筆者:住江 太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報