日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
エチレン・プロピレンゴム
えちれんぷろぴれんごむ
ethylene-propylene rubber
エチレンとプロピレン(6対4~7対3)をツィーグラー(チーグラー)系触媒で共重合した非晶性高分子。ASTM(アメリカ材料試験協会)の規格による略称はEPM。これは分子内に二重結合がないので、架橋は過酸化物によって行われる。通常の硫黄(いおう)による加硫を可能にするため、エチレンとプロピレンのほかに、第三成分として1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、あるいはエチリデンノルボルネンなどの非共役ジエンを5%以下加えた三成分共重合体が工業化されている。EPDM(ethylene-propylene diene methylene linkage)、あるいはEPT(ethylene-propylene terpolymer)とよばれる。特殊ゴムではもっとも多量につくられている準汎用(はんよう)ゴムである。EPDMは飽和炭化水素に近い構造をもっているので、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性が優れ、150~170℃での常用も可能である。また、耐寒性、低温特性もよく、零下55℃でも可撓(かとう)性があり、耐薬品性や電気特性もよい。欠点は、加硫速度が遅いこと、粘着性や接着性が劣っていることである。用途は、電線の被覆、防水シート、タイヤのサイドウォール、自動車部品(ラジエーターホースなど)、工業用品、建築材料、PP(ポリプロピレン)バンパーの耐衝撃性改質材などである。
[福田和吉]