一冊(あるいは数冊にわたるシリーズ)の書籍を対象として、美的・視覚的デザインを行うこと。日本では「装丁、装幀(そうてい)、装釘(そうてい)」「装本」「造本」などともよばれる。装丁、装本はその名のごとく、書籍の「うわべを飾る」「身なりを整える」こと。書籍の皮膚にあたる箱、カバー、表紙、見返し、扉(ときに花布(はなぎれ)、しおり、帯に及ぶ)などの意匠を案出し、装いを整えることをさす。また造本は、製本を含む本の意匠に力点が置かれるが、場合によっては以下に述べるような、より広い意味をもつブック・デザインに似た用語とされることがある。
[杉浦康平]
まず、〔1〕著者や編集者との綿密な打合せに基づき、〔2〕製作・進行の過程に深くかかわりながら、〔3〕書籍の内容にふさわしい本文部分の視覚化を試み、〔4〕それに見合う装丁デザインを行い、〔5〕ときに書店や読者に対する広告や販売計画にまで参画し、書籍の視覚的イメージの全体像を創出してゆく。ブック・デザインとは、書籍の着想から刊行までに必要とされる、内容から外装に及ぶ一連のデザインをさす。優れたブック・デザインを得ることによって、著者の思想や作品が血肉化され、社会や読者に向かい、生き生きした書籍の姿をとって立ち上がることになるのである。
[杉浦康平]
ブック・デザインは、書籍という姿に結晶化された著者の考え方や作品の特色など、書籍の内容そのものが巧みに視覚化され、全体を覆う意匠となって表出されていることが要求される。そのために、次のようなチェックポイントに対する的確なデザイン的配慮が必要となる。(1)判型や造本形式の検討。内容がにじみ出るような装丁の創案。(2)用紙の厚み、しなやかさ、色みや肌合いの選定。これは書籍の軟らかさ、厚さ、重さにかかわってくる。(3)本文の文字書体や文字組みの設計、余白の処理。これはタイポグラフィとよばれ、グーテンベルクの活版印刷術の定着以降、長い歴史をもっている。巧みなタイポグラフィの設計によって書籍全体の品位が決定される。(4)文字と図像(イラストレーション、写真、図表など)の効果的な構成。これはエディトリアル・デザインとよばれ、視覚的表現に力点を置く現代の書籍では、ときに全ページを覆い尽くすほどの重要な作業となっている。(5)以上の設計を生かしきる印刷方式の選定とその管理。
このために、ブック・デザイナーには、文化全般に対する深い教養、印刷や素材に対する適正な知識、さらに秀でた感性と技能が要求される。
[杉浦康平]
『道吉剛他編『現代日本のブックデザイン 1975―1984』(1986・講談社)』▽『菊地信義著『装幀談義』(1986・筑摩書房)』▽『平野甲賀著『装幀の本』(1985・リブロポート)』▽『日本タイポグラフィ協会年鑑編集委員会編『日本タイポグラフィ年鑑』隔年刊(朗文堂)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…近年本のデザインは出版が消費化するにつれて大いに進歩した。読者の関心をひくために,限られたコストのなかで最大の効果をねらうブックデザイン(装丁)は,社内やフリーのブックデザイナーによって担当されている。
[販売,流通]
どれほどすぐれた思想も,読まれなければ伝えられたことにならない。…
…〈装幀〉という言葉が本来の意味を離れて,いわば誤用が定着してしまった原因の一つには,和装本の表紙づくりや裏打ちの仕事が,書画を表装する仕事と似通っていたこともあげられよう。書物の大部分が工場の機械によって大量生産される現代では,言葉に本来含まれていた〈製本〉に相当する意味は失われ,ブックデザインの同義語として用いられている。しかし〈装丁〉の定義は必ずしも明確ではなく,ジャケット(いわゆるカバー)デザインのみを指していわれる場合もあり,また〈趣味の装丁〉などのように〈手製本〉の意味で使われている事例もある。…
※「ブックデザイン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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