図書展,書籍見本市と訳され,多数の出版社がそれぞれの出版物を持ち寄って,主にその販売権,出版権などの売買を目的とした展示会のことをいう。とりわけ世界の約20ヵ国で定期的に開催されている国際図書展のことをさすことが多いが,そのうち最大のものはドイツのフランクフルト市のもの(Frankfurter Buchmesse)である。フランクフルトではすでに15世紀末には毎年ブック・フェアが開かれていた記録があり,16世紀にはイギリス,フランスなども参加するようになって,17世紀にはたいへん盛んであったという。18世紀以降は,文芸の中心地ともなったライプチヒのほうが盛んになって,第2次世界大戦前までドイツ・ブック・フェアとして行われていた。しかし戦後の東西分割時代にその開催地は1949年にフランクフルトに移され,現在に至っている。その後もライプチヒ・フェアは続いているが,小規模のものとなった。フランクフルト・ブック・フェアはドイツ書籍協会(1825設立)によって運営されており,当初は世界の書籍出版社,卸売業者,小売業者のための販売促進が目的であったが,数年後には現在のように出版権,著作権の売買が主流となった。今日では100ヵ国以上から数千の出版社が参加している。そのほか国際図書展と銘うって毎年定期的に開催されるのは表のとおりである。そのうち日本の出版社が多数参加する主要なブック・フェアは,フランクフルトのほかに,ボローニャ児童図書展,アメリカン・ブックセラーズ・アソシエーション大会(略称ABA)である。この三つは年々規模が拡大し,さらにその重要性を増している。なお,日本でも〈東京国際ブックフェア94〉(1994年1月,出版7団体の共催)のころから,著作権取引を主とするブック・フェアが定着しつつある。
世界的ベストセラーはブック・フェアでも高額で取引され,話題も集中する。超有名作家の新作はほんの数枚の梗概(こうがい)の段階で売買され,人気作品には激烈な競争がつきまとう。モハメド・アリの自伝がランダム・ハウス社(アメリカ)から売り出されたとき,ドイツの出版社間で激しい競争があり,最終的に権利を獲得した出版社が最後まで競い合った相手が,自社傘下の子会社であったことが後に判明して仰天したことがある。
ブック・フェアが生んだ最大の成果は,国際共同出版の手法である。カラー印刷が日常的になった現代でも,カラー・ページの多い大企画は一出版社だけでは初期コストが大きくて手に余る場合があるが,ブック・フェアを通じて各国語版の受注をとることにより,大量印刷が可能になって(文字部分だけ差し替える),カラフルで高品質の本が安価で出版できるようになった。現在では,日本からも多くの本がブック・フェアを通じて海外へ紹介されている。
執筆者:森 武志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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(村上信明 出版流通ライター / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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