出版権設定契約によって出版者の取得する権利をいう。出版権は、出版者に対し契約によって定められた範囲内で出版の目的のために著作物の直接的支配を許す権利であるから、準物権的権利であり、著作権者は出版権者による著作物の利用(出版の目的でかつ設定行為で定められた範囲内に限られる)を認容しなければならない義務を負うものである。出版権は、著作物を原作のまま印刷その他の機械的または化学的方法により文書または図画として複製・頒布する専有権を内容とする(著作権法80条1項)。原作のままとは、著作物をそのまま再現複製することをいい、したがって著作物の内容を変更することは許されない。出版権を取得した出版者は自ら複製・頒布をなすことが必要である。したがって第三者に対しその出版権の目的である著作物の複製を許諾する権限を有しない(同条3項)。また出版権の存続期間については、設定行為において任意に定めることができるが、その定めがないときは、設定後最初の出版のあった日から3年間存続する。なお、出版権の取得を第三者に対抗するためには、文化庁において出版権の登録を経由しなければならない。
[半田正夫]
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…書籍以外の新聞・雑誌等への寄稿契約,出版者が複製・頒布義務を負わなくてよい著作権譲渡契約,委託出版契約などは,出版を対象とする契約であっても出版契約には含めない。 出版契約は出版者が取得する権利の種類によって,単純許諾契約,排他的許諾契約,出版権設定契約に分けられる。単純許諾契約では,出版者は契約に定める条件の範囲において著作物を複製し頒布する権利を取得するが,その権利は独占的なものでなく,著作権者は同様な権利を第三者にも与えることができる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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