改訂新版 世界大百科事典 「ブンチョウ」の意味・わかりやすい解説
ブンチョウ (文鳥)
Java sparrow
Padda oryzivora
スズメ目カエデチョウ科の鳥。全長約14cm。スズメと同大。背面は明るい灰色。腹はいくぶん赤みを帯び,下腹は白い。頭部と尾は黒いが,ほおに白い大斑がある。大きなくちばしと足は濃いピンク。もともとはジャワとバリ島に分布していたが,飼っていたものが逃げ出して東南アジア,東アフリカ,ザンジバルなどへ広く広がった。人里,耕地,水田,マングローブ林などにすみ,原産地ではごくふつうに見られる。地方によっては大群をつくって水田を荒らし,イネの大害鳥である。一夫一妻で繁殖し,人家の屋根の下や木の上に球形の巣をつくり,1腹4~5個の卵を産む。雛には昆虫を与えるが,まもなく吐き戻した種子に切り替える。
古くより人に飼育されていたらしいが,日本へは江戸時代の初期に中国を経て入ってきたといわれる。以来,日本でしきりに品種改良が行われた。原種に近い姿をしているものはナミブンチョウといわれ,頭に白斑の入っているものはサクラブンチョウ,白化したものはシロブンチョウと呼ばれる。じょうぶな飼いやすい鳥で,ヒエ,アワ,キビを混ぜて飼料とする。巣引には発情材として卵米を与える。手のりブンチョウはシロブンチョウを生後2週間くらいから,わらでつくった〈ふご〉に入れ,特別な飼料を与えて仕立てあげる。弱いブンチョウであるため,飼育には注意が必要である。日本各地の都市近郊には籠から逃げだしたものがすみつき,半野生化して水辺のヨシ原で繁殖しているものもある。
執筆者:中村 登流
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報