古生マツバラン類(無葉類)のトリメロフィトン目に属する絶滅シダ植物の1属。ドーソンJ.W.Dawsonが1859年にカナダのガスペ半島の前期デボン紀の地層から報告したプシロフィトン・プリンセプスP.princepsは葉も根もなく〈葉のない植物〉という意味でプシロフィトンと命名され,初期の陸上植物と考えられた。ドーソンの復元図はばらばらに産した化石をまとめて作りあげたもので別植物の部分も含まれ,後の混乱の原因となった。彼の書いた水平の地下茎は別植物のもので,今日でもこの植物の下部は不明だが,主茎をもつことがトリメロフィトン目の特徴で,このことは初期のライニア目よりは進化したことを示している。直径1cm,高さは少なくとも1mくらい。茎の表面は突起物でおおわれたものと,突起物をもたないものとある。突起物は葉に進化するものと考えられたこともあったが,気孔もなく,維管束もないことから,現在では腺と考えられている。アーバーE.A.N.Arber(1921)はプシロフィトンを中心としたデボン紀前期の植物をプシロフィトン植物群Psilophyton flora,デボン紀後期の植物をアルカエオプテリス植物群Archaeopteris floraとし,前者を陸上植物初期のものと考えた。現在では主茎をもったプシロフィトンより古く,主茎がなく二叉(にさ)分枝する裸枝のみのライニア目が初期陸上植物と考えられ,プシロフィトン植物群の名は使用されなくなった。
主茎がなく裸枝の先端に胞子囊をつけたライニア目Rhyniales,裸枝の側面に胞子囊をつけたゾステロフィルム目Zosterophyllales,主茎を形成したトリメロフィトン目Trimerophytalesなど,葉のない植物はまとめて古生マツバラン類と呼ばれる。胞子囊を頂生するライニア目と側生するゾステロフィルム目とは異系統の植物と考える学者もおり,そのときは異系統を含む古生マツバラン類という分類名は成立しない。しかし便宜的に葉のない植物をひとまとめにして古生マツバラン類とし,同じ進化段階にある植物の意として,使用している学者もある。このことはシダ植物,裸子植物,被子植物の場合も同じで,これらは分類名でなく,同じ進化段階にある異系統の植物をまとめたものと考える学者もある。
執筆者:浅間 一男
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