ヨーロッパ大陸唯一の活火山。古称ウェスウィウスVesuvius。ナポリの東12kmに位置し,底面直径約15kmの複合成層火山を総称していうが,厳密には外輪山をなすソンマSomma(最高峰1132m)と中央丘である狭義のベスビオ(標高1281m)より構成されることからソンマ・ベスビオと称される。初期のソンマ火山は標高3000mに達したと考えられるが,前8世紀ころの大噴火により,山頂火口が拡大され,その後,79年まで活動は休止した。当時死火山と考えられていたこの火山は,63年の地震を前兆として,79年8月24日に大噴火した。その結果,ソンマ火山の火口壁は,現在ベスビオ(狭義)の北側を取り巻く外輪山となったとされている。この噴火で大量の軽石や火山灰が噴出され,おもに南東山麓に降下してポンペイを埋没させた。また,噴火後に火山泥流が西方に流出してヘルクラネウム(現,エルコラーノ)を埋没させた。現在,両市街とも発掘が進み,当時の生活状況が再現されている。79年の噴火は,当時,対岸のミセヌム岬にいた小プリニウスにより詳細に記述されたので,プリニアン(プリニー式)噴火と称される。すなわち,激しい爆発によって,大量の軽石や火山灰が上空高く噴出して,巨大なキノコ形の噴煙が生じた後,大規模な降下火砕物を伴う噴火である。
79年噴火以後,50回以上の噴火が繰り返された。とくに1631年以降は活発で,山頂および山腹で起こり,たびたび溶岩を流出した。山頂には直径約400mの火口があり,休止期には深さ200m以上にもなるが,活動期には溶岩で満たされ,しばしば溢出した。最近の噴火は1944年3月で,溶岩流出を伴ったが,その後,現在までベスビオの噴煙は絶えている。
ベスビオの基盤は,第三紀堆積岩,白亜紀・ジュラ紀の石灰岩,三畳紀ドロストーンで,そのマグマ溜りの頂部は上記基盤の最下部層中にあると考えられる。ベスビオの溶岩はSiO247~48%,ややアルカリに富み,テフライトと称される。その噴出物中には,マグマと反応した石灰質岩石の捕獲岩を多く含んでいる。
1845年に標高608mの所に,世界最初の火山観測所がつくられ,現在にいたっている。これより山麓にかけては,地味肥沃で果樹が多い。ナポリ民謡〈フニクリ・フニクラ〉は,80年に,ベスビオの麓,標高800mから火口縁(標高約1200m)までフニコラーレ(索道鉄道)が開通した際のコマーシャルソングである。このフニコラーレは,1944年の噴火で破壊されたので,現在は,2人掛けの腰掛けリフトが観光客を火口縁に運んでいる。
執筆者:横山 泉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…保養地の楽しみのためのものと,所領の経営をおもな目的とするものがあった。後者の遺構はフランス,ライン地方,イングランド,北アフリカなどでも発掘されているが,特に重要なのは,イタリアのウェスウィウス(ベスビオ)山麓で発掘された約40のウィラで,紀元79年の大噴火の時の火山灰に埋もれていたものである。ウィラの建物は,主人の居住用の部分と所領経営のための部分とからなり,後者には大きなブドウ搾り器,オリーブ搾り器,ブドウ酒醸造場,脱穀場などがあった。…
…イタリアの古代都市。カンパニア州北西部,ナポリの南東約23kmのナポリ湾沿岸,ベスビオ山の南麓に位置する。交通の要衝,肥沃な後背地などの条件によりオスキ人がまず集落をつくった。…
※「ベスビオ山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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