日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘルクラネウム」の意味・わかりやすい解説
ヘルクラネウム
へるくらねうむ
Herculaneum
イタリア南部、ベスビオ火山西麓(せいろく)にあった古代都市。ヘルクラネウムはラテン名で、ギリシア名ヘラクレイオンHērakleion、イタリア名エルコラノErcolano。現在のエルコラノはカンパニア州ナポリ県の町で、人口5万4699(2001国勢調査速報値)、古代都市の跡に位置する。1997年にポンペイ、トッレ・アヌンツィアータとともに世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
古くよりオスク、サムニウムなどのイタリア系民族が居住したが、やがて紀元前6世紀にギリシア人が植民してギリシア風の都市となり、ネアポリス(ナポリ)の影響下に入った。名称は、ヘラクレスを守護神としたことによる。一時ヌケリアに支配されてサムニウムの同盟に入ったが、カンパニアに進出したローマに服し、これと同盟して前1世紀に自治都市となった。当時の人口は約5000だがローマ市民の別荘地として繁栄し、公共建築や瀟洒(しょうしゃ)な邸宅が建てられた。紀元後79年8月24日ベスビオ火山の大爆発により熱泥流に襲われ、ポンペイとともに一瞬のうちに埋没した。その後復興されず、覆土の上に集落ができていたが、1927年に正式に発掘が始まり、古代史の解明に貴重な資料を提供している。
[松本宣郎]