改訂新版 世界大百科事典 「ベニスズメ」の意味・わかりやすい解説
ベニスズメ (紅雀)
Deileptenia elpenor
鱗翅目スズメガ科の昆虫。翅の開張6cm内外のガで,体翅とも美しい紅色。前翅は褐色を帯び,後翅の基部に近い半分は黒色。腹部の背面は褐色だが,背面の中央を細い紅色帯が走り,基部の側面は黒色。ヨーロッパからシベリア,中国を経て日本全国に分布する。夏に出現してよく灯火に飛来するが,昼間花みつを求めて花を訪れるのもよく見られる。幼虫は体長8cm。体色には変異があって,褐色型と緑色型とに分けられる。いずれも細かな黒線を散布し,各節の両側に黒紋を連ね,第1と第2腹節に周囲の黒い眼状紋がある。胸部から頭部に向かって体は急に細くなっている。害敵が接近したとき,四つの眼状紋のある膨れた腹部をもち上げることによって威嚇するものと思われる。一般のスズメガに発達している腹部第8節の尾角は短く,腹方に曲がっている。オオマツヨイグサ,ホウセンカ,ツキミソウ,カワラマツバなど多くの植物につく。
執筆者:井上 寛
ベニスズメ (紅雀)
red avadavat
strawberry finch
Amandava amandava
スズメ目カエデチョウ科の鳥。全長約10cm。スズメより小さく,雌雄異色。雄の生殖羽は全身紅赤色で白小斑が点在し,翼と尾は黒い。非生殖羽は赤みが少なくなり赤褐色。雌は背面黄褐色で,腰が赤い。くちばしは雌雄とも赤い。インドからタイを経てバリ島まで不連続に分布している。湿地や水路べりのヨシ原,草地,やぶ地にすみ,種子を食べる。一夫一妻で繁殖し,水べりのとげのあるやぶの中に側方に短いチューブのついた入口がある球形の巣をつくる。1腹の卵は6~10個,雌雄交替で抱卵する。色が美しく,鳴声もよいところから飼鳥として輸入される。アワで飼うが,巣引はむずかしい。籠から逃げ出したものが半野生化して都市近郊にすみつき,水辺のヨシ原や海岸の草地などで繁殖しているものもある。非繁殖期には小群で見られる。
執筆者:中村 登流
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報