ベルクソン哲学の基本概念(読み)べるくそんてつがくのきほんがいねん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ベルクソン哲学の基本概念
べるくそんてつがくのきほんがいねん

純粋持続(じゅんすいじぞく) dure intrieure
 ベルクソン哲学の中心観念。いっさいの言語・概念・記号を振り払って自己内界に深く深く沈潜するとき、そこに直覚的に感得される生動そのものとしての自我・人格の存在形式。内容的には過去の全体的保存ともいえるが、刻一刻の質的変化を伴うことから過去の現在化であり、また新しい質の創造をも含意するから未来への伸長なる側面ももち、さらには自覚的体験の域を超えた無意識的な領域をも統合していくところから、別称「純粋記憶」ともよばれるにもかかわらず、単に心理学的・認識論的レベルにとどまらず存在論的射程をもあわせもつ。その創造性、包摂性がやがて、前者はエラン・ビタール、後者はエラン・ダムール観念にそれぞれ発展する。
エラン・ビタール lan vital
 ベルクソン哲学を特徴づけるイマージュ。内的持続は宇宙の万象にもろもろの形でみいだされるが、無気力物質を記憶なき絶えざる現在反復とすれば、生命は過去―現在―未来の時間的総合(サンテーズ)の弛緩(しかん)・緊張によってもろもろの水準に分けられ、そのような緊張、それに由来する活力・創造力の理念的極限に一つの至高にして完璧(かんぺき)な純粋創造力を想定しうる。エラン・ビタール(生の飛躍)とは、当時最先端の科学であった生物学の成果を踏まえて、宇宙論的視座からこのような自己刷新的持続や時間的総合の極北としての純粋創造力に仮に付された名辞であり、万象の本質がそこにみられるとともに、事実上の万象はこの創造力のもろもろの挫折(ざせつ)態と意味づけられた。
エラン・ダムール lan d'amour
 ベルクソン哲学を完成させるイマージュ。生物学的・宇宙論的観点からエラン・ビタールなる名辞によって示したものを、さらに宗教・倫理・形而上(けいじじょう)学的観点から指示し直したもの。純粋創造力は究極的には万象の始源に想定されねばならないが、このエラン・ダムール観念によって、その創造力が単なる生物学的なものではなく、キリスト教的愛の神と両立しうるものであることが明らかになった。ただ、このような「愛の活力」は「道徳的というより形而上学的本質」のものであり、地上の諸存在の再活性化という副次的機能において倫理的たるにすぎず、ここに『新約聖書』の「愛の倫理」に対する唯心論形而上学の面目もあるといえる。

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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