ロシア出身の哲学者。キエフの貴族の生れ。キエフ大学法学部中退。学生時代よりロシア社会民主労働党の活動に参加,逮捕・流刑も経験した。1900年ころから著作活動に入り,カントの批判哲学によるマルクス主義の修正をめざし,P.ストルーベを知る。03年S.ブルガーコフを,04年メレシコフスキーを知るなど時代の多様な思潮に身をさらし,観念論からしだいにロシアの伝統たる宗教哲学へ回帰した。09年左翼インテリゲンチャの世界観を批判した文集《道標》(1909)に参加。最初の主著《創造の意味》(1916)では,それまでの超越的志向と内在的志向を統合する独自の立場として創造の問題を提起し,人間は創造においてこそ自由たりえ,自由は神が人間に課した召命であるとした。J.ベーメの影響が強く,また人間の主体性を強調するこの哲学は,ロシア正教会からは異端視された。以後の主な著作としては《人間の使命》(1931),《精神と現実》(1937),《人間の隷従と自由》(1939)などがある。歴史哲学の分野にも神なき現代についての透徹した考察があり(《歴史の意味》(1923),《新しき中世》(1924)など),共産主義を論じては,これが人間の自由と相いれないとした(《不平等の哲学》(1923),《共産主義の真実と虚偽》(1932)など)。22年ソビエト政府から反動思想のゆえをもって国外追放に処され,はじめベルリンに,24年パリに移った。ここで宗教哲学アカデミーを主宰,雑誌《道》の編集など旺盛な活動により西欧思想界に重きをなした。死後刊行の自伝《自己認識》(1949)は重要。著作の邦訳も多い。
執筆者:青山 太郎
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ロシアの宗教哲学者。キエフ(現、キーウ)郊外の軍人貴族の家に生まれる。キエフ(キーウ)大学に学ぶうち、マルクス主義に接し、哲学的な唯物論には批判的であったものの、終末論的メシアニズムの観点から革命運動に参加。1898年大学から追放され、ついで1900年ボログダに流刑される。このころよりマルクス主義とドイツ観念論哲学との統合を目ざして思想的に格闘、しだいに宗教哲学への傾斜を深めていく。
ドイツのハイデルベルク大学に学んだのち、帰国して1904年ペテルブルグに出る。ここで20世紀初めのロシアが経験した宗教的、文化的ルネサンスの渦に身を投じ、さまざまな思想家と交わった。1907年ふたたび西ヨーロッパを訪れ、帰国後「宗教哲学協会」の設立に参画する。文集『道標』(1909)などによって左翼インテリゲンチャの世界観を批判する一方、ロシア正教会の教権主義を激しく攻撃し『創造の意味』(1916)を著した。
革命後、1922年モスクワ大学の哲学教授に任ぜられたが、思想的に革命政府と折り合わず、「イデオロギー上の理由から」旧ソ連国外へ追放される。その後、一時ベルリンに住んだが、1924年よりパリ近郊のクラマールに居を定め、ここで「哲学宗教ロシア学院」を指導するとともに、雑誌『道』を主宰した。
人間の主体性、創造性に重きを置く独自のキリスト教的実存主義の哲学を展開。ヒューマニズムなきあと、新たな世界観がまだ確立しない過渡期たる現代を「新しい中世」ととらえた。『歴史の意味』(1923)、『隷属と自由』(1944)、『ロシア思想史』(1948)など、30冊に及ぶ著書はロシア語その他の西欧語で書かれているが、大部分はヨーロッパの各国語に翻訳されており、著者が西洋の思想界でいかに重きをなしたかを瞭然(りょうぜん)とさせる。
[尾崎ヘイワ]
『氷上英広他編『ベルジャーエフ著作集』全8巻(1960~1966・白水社)』
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1874~1948
ロシアの哲学者。若くしてマルクス主義の洗礼を受けたが,のちしだいに宗教哲学に傾き,唯物論を批判。1922年国外に追放され,パリなどで活躍した。主著『マルクス主義と唯物論』など。
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…19世紀のホミャコーフ,ベルジャーエフなどロシアの宗教思想家に見られた神学思想をいうが,さらに神学の枠をこえ,西ヨーロッパとロシアを識別するロシア民族性の特質とされた理念をもさす。ロシア語のソボルsobor(集い)から派生したことばである。…
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