日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベルナルドゥス」の意味・わかりやすい解説
ベルナルドゥス
べるなるどぅす
Bernardus Claravalensis
(1091―1153)
フランスのシトー会修道士。ディジョン近郊のフォンテーヌの名門に生まれる。シトー会修道院に入り、1115年クレルボーに大修道院を建て院長となる。以後、当地はシトー会の中心となり、クレルボーのベルナルドゥスとよばれる。生涯を通じて教会および修道院の改革者、説教者、著作家として活躍し、西欧のほとんどすべての著名人と交渉をもった。思想的にはアウグスティヌスに基づき、オリゲネス、ニッサのグレゴリオス、偽ディオニシウス・アレオパギタからの影響も受けて内面的省察を重んじた神学者であり、同時代の弁証論者たちに対して批判的態度をとった。彼がアベラールの異端宣告に尽力したこと、1140年にはパリの諸学校に介入したことは思想史に名高い事件である。彼が思想的にもっとも貢献した領域は神秘神学であり、愛と謙遜(けんそん)を通じて神との一致を説く彼の神秘主義は、中世および近世初頭の神秘主義の先駆となった。『神への愛について』De Diligendo Deo、『恩寵(おんちょう)と自由意志について』De Gratia et Libero Arbitrioのほか、書簡、説教が多く残されている。1174年列聖。教会博士。
[宮内久光 2017年12月12日]