ベン・ハー(読み)べんはー(その他表記)Ben-Hur, A Tale of the Christ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベン・ハー」の意味・わかりやすい解説

ベン・ハー
べんはー
Ben-Hur, A Tale of the Christ

アメリカの作家ルー・ウォーレスの長編小説。1880年刊。副題キリスト物語」。主人公ベン・ハーはイエス・キリストと同時代のユダヤ人。パレスチナのローマ総督に危害を加えようとしたかどで、ガレー船の苦役を課されるが、たまたま船団を指揮する護民官の危険を救ったことから請われて養子となり、ローマ軍人として訓練を受ける。その後、戦車レースで仇敵(きゅうてき)を打ち負かし、またポンテオ・ピラトの策動に抗議し、蜂起(ほうき)したガリラヤ人たちを指揮する。ついにはハンセン病をイエスの手で癒(いや)された母親と妹に再会し、奇跡を目の当たりにしてイエスに帰依(きえ)する。発表と同時にベストセラーとなり、劇化(1899初演)はブロードウェーの舞台に繰り返し上演され、また映画化はサイレント時代に2回(1907、1925)あるが、1959年のウィリアム・ワイラー監督作品は作品賞を含め11部門のアカデミー賞を受賞した。

[齊藤忠利]

映画

アメリカ映画。1959年作品。ウィリアム・ワイラー監督。ルー・ウォーレスの同名原作は、サイレント時代に2度映画化されており(1907年、シドニー・オルコットSidney Olcott(1873―1949)監督、1925年、フレッド・ニブロFred Niblo(1874―1948)監督)、本作はその70ミリカラー版によるリメイク。キリストの受難と復活を背景に、ユダヤ人青年豪族ベン・ハーの波瀾(はらん)万丈の半生が、さらに迫力を増したスペクタクル・シーンとともに描かれる。いちばんの見せ場となる宿敵メッセラとの戦車競争のアクション・シーンは、おもに第2班の監督アンドリュー・マートンAndrew Marton(1904―1992)とスタントマン、ヤキマ・カヌートYakima Canutt(1895―1986)が撮影を担当した。映画がしだいに斜陽の時代に入るなか、メジャー撮影所のMGM総力を結集して製作したこの映画は全世界で大ヒット、アカデミー賞も作品、監督、主演男優(チャールトン・ヘストン)をはじめ11部門で受賞、当時の最多受賞記録を打ちたてた。

[宮本高晴]

『白石佑光訳『ベン・ハー』(新潮文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ベン・ハー」の意味・わかりやすい解説

ベン・ハー
Ben Hur

アメリカの弁護士・政治家・作家のウォーレスLew(is)Wallace(1827-1905)作の小説。1880年刊。イエスの時代のベツレヘムでのこと,ユダヤの若い貴族のベン・ハーが要人殺害計画のぬれぎぬを着せられてガレー船に送り込まれたり,友人と思い込んでいた男の計略にのせられるが危うく難を逃れるなど,数奇な運命ののち初めて,イエスの存在を信じるようになる,という物語。出版と同時に英米で爆発的な売行きを見せ,数ヵ国で翻訳が出版された。小説の出版から20年近くたってヤングWilliam Youngがこれを劇化(1899),またも画期的ロングランとなった。さらに20世紀に入って1926年,400万ドルという記録的な費用をかけて映画化(監督ニブロFred Niblo)され,ベン・ハーが友人の謀略の中で壮絶な馬車レースを展開する場面に観客はかたずを飲んだ。59年の2度目の映画化(監督W. ワイラー)では,馬車レースの場面をさらに壮大なスペクタクルに仕立て上げて観客を動員した。
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デジタル大辞泉プラス 「ベン・ハー」の解説

ベン・ハー〔映画:1959年〕

1959年製作のアメリカ映画。原題《Ben-Hur》。ローマ帝国支配下のエルサレムに生まれたユダヤ人ベン・ハーの生涯を描く歴史スペクタクル。監督:ウィリアム・ワイラー、出演:チャールトン・ヘストン、ジャック・ホーキンス、ヒュー・グリフィス、スティーブン・ボイドほか。第32回米国アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞(チャールトン・ヘストン)、助演男優賞(ヒュー・グリフィス)、美術賞(カラー)、撮影賞(同)、衣裳デザイン賞(同)、音響賞、編集賞、劇・喜劇映画音楽賞、特殊効果賞受賞。

ベン・ハー〔映画:1925年〕

1925年製作のアメリカ映画。原題《Ben-Hur: A Tale of the Christ》。古代ローマでの初期キリスト教徒たちを描く歴史スペクタクル。監督:フレッド・ニブロ、出演:ラモン・ナバロ、フランシス・X・ブッシュマン、ベティ・ブランソンほか。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベン・ハー」の意味・わかりやすい解説

ベンハー
Benhā

エジプト北部,ナイルデルタ,カイロ北西 48kmに位置する都市。カルユービーヤ県の県都。ズムヤート川とタウフィーク運河の間にある肥沃な綿作地帯の中心地。亜麻織布,綿織布,野菜加工の工場がある。鉄道でカイロ,アレクサンドリア,イスマーイーリーヤと結ばれている。人口 12万 200 (1986推計) 。

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世界大百科事典(旧版)内のベン・ハーの言及

【MGM】より

…メトロ・ピクチャー・コーポレーション(1915設立),ゴールドウィン・ピクチャー・コーポレーション(1917設立),ルイス・B.メイヤー・ピクチャーズ(1918設立)の3社が合併して,1924年にメトロ・ゴールドウィン・メイヤーMetro‐Goldwyn‐Mayerとして設立された。ニューヨーク本社の社長ニコラス・スケンク(1881‐1969)の保守的な経済政策,ハリウッドの撮影所長ルイス・B.メイヤーの支配力,〈ハリウッドの神童〉といわれた製作担当アービング・タルバーグ(1899‐1936)の創造的な着想のもとで,《ベン・ハー》(1925),《ブロードウェー・メロディ》(1929),《グランド・ホテル》(1932)などを製作し,1920年代後半から30年代にかけて躍進した。ウォール街の金融資本と結びついて黄金時代を迎えたハリウッドで,MGMは〈芸術のための芸術〉というモットーで飾ったほえるライオンをトレードマークとし,20年代初めに前身のメトロ社が,ルドルフ・バレンティノ主演の諸作によって基礎をつくった〈スターシステム〉を伝統に,グレタ・ガルボ,クラーク・ゲーブル,グロリア・スワンソン,ロバート・テーラー等々,〈空の星より多いスター〉を誇り,ひたすら〈健全な娯楽映画〉の製作を目ざした。…

【スペクタクル映画】より

… スペクタクル映画はグリフィス以来,ハリウッドのお家芸になって今日まで続いているが,全映画史を通じてその最大の推進者となったのが〈スペクタクルの巨匠〉の名をほしいままにしたセシル・B.デミル監督である(他方,フランスにはほとんど狂い咲きのように大スペクタクル映画をめざしたアベル・ガンス監督の孤高の存在がある)。1920年代には西部の開拓者たちを描いた《幌馬車》(1923),聖書に取材したデミル監督《十誡》(1923),古代ローマの歴史を描いた《ベン・ハー》(1926),キリストの生涯を描いたデミル監督《キング・オブ・キングス》(1927),第1次世界大戦における空中戦を描いた《つばさ》(1927)などがスペクタクル映画としてつくられた。30年代には,経済的不況による製作費の削減で前半はふるわず,セックスと暴力のメロドラマ的《暴君ネロ》(1932),デミル監督の見せかけだけの歴史スペクタクル《クレオパトラ》(1934),《十字軍》(1935)などでお茶をにごした程度だったが,半ばころからはベストセラー小説の映画化が盛んになり,ハーベイ・アレン原作による《風雲児アドバース》(1936),ジェームズ・ヒルトン原作《失われた地平線》(1937),パール・バック原作《大地》(1937),マーガレット・ミッチェル原作《風と共に去りぬ》(1939),ルイス・ブロムフィールド原作《雨ぞ降る》(1939)などがつくられた。…

※「ベン・ハー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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