翻訳|Bethlehem
エルサレムの南10kmにある町。人口約3万2000。ヘブライ語で〈パンの家〉を意味する。アラビア語ではバイト・ラフムBayt Laḥmとよばれる。ダビデ王の生地。後にメシア信仰の象徴となる。イスラエルを救うメシアはダビデの子孫の中から出てくるからである(《ミカ書》5:2)。キリスト教の伝承によれば,イエスの父はダビデ家の子孫であり,イエスはベツレヘムで生まれた。4世紀にコンスタンティヌス大帝が降誕教会を建設,ヒエロニムスのラテン語訳聖書(《ウルガタ》)は,この教会の地下の一室で生まれた。
執筆者:池田 裕 イスラム時代にも,ベツレヘムの聖地としての性格は失われなかった。ムスリムの地理書や旅行書では,イエス生誕の地として,また比類なき降誕教会の美しさが称賛されるとともに,この地が,コーランにいう(19章23~26節)身ごもったマリアにナツメヤシの実が授けられた地であり,2代カリフ,ウマル1世がパレスティナ平定後に教会をモスクに改造して礼拝を行った地であることが述べられている。ベツレヘムを訪れる巡礼者は,ムスリムばかりでなく,西方のキリスト教徒の往来も盛んでにぎわった。しかし1099年に第1回十字軍が,ベツレヘムを占領して城砦を築き,十字軍時代この地は抗争の的となった。19世紀以降,ベツレヘムはエルサレムとともに聖地問題の焦点となり,とりわけ降誕教会の管理権をめぐるフランス,ロシアの対立はクリミア戦争(1854-56)をひきおこすこととなった。第1次中東戦争の停戦(1949)後,ベツレヘムはヨルダン領に属したが,第3次中東戦争(1967)以降イスラエルの占領が続いている。
執筆者:三浦 徹
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…嬰児(えいじ)虐殺ともいう。ベツレヘムにユダヤ人の王となる救世主が生まれたことを知ったヘロデ大王は,それを確かめるため,東方から来た三博士を遣わす。幼児イエスを拝んだ博士たちは夢のお告げでヘロデの悪意を知ると,彼のもとには戻らずにそのまま故国に帰る。…
※「ベツレヘム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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