デジタル大辞泉 「斜陽」の意味・読み・例文・類語
しゃ‐よう〔‐ヤウ〕【斜陽】
2 勢威・富貴などが衰亡に向かっていること。没落しつつあること。「
[補説]書名別項。→斜陽
[類語](1)入り日・夕日・西日・落日・落陽・夕影・残光・夕映え・夕日影・残照・残映・夕焼け・朝日/(2)没落・落ちぶれる・うらぶれる・成り下がる・零落・
太宰治の長編小説。1947年《新潮》に連載され,同年新潮社から刊行。敗戦によって没落してゆく貴族の家庭を中心に,母,姉,弟,そして姉の恋人である無頼の作家の姿が主として姉の独白や手紙を通して語られるロマネスクな作品。特に滅びゆく高貴なものの美しさが〈日本で最後の貴婦人〉ともいうべき母の像を通して描かれている。人間と人間が争わなければ生きてゆけない社会に絶望しデカダンな生活を送っていた弟は,その母の死に殉じて自殺するが,姉は母にひかれながらも,生きることの汚れに耐え,小説家の私生児を生むことによって〈道徳革命〉をめざそうとする。戦後社会の欺瞞性に強く反発した太宰が,生家の没落をきっかけに日本の《桜の園》を書こうとしたものであり,4人の登場人物はそれぞれ作者の憧憬と絶望と反抗を背負った分身だといえる。太宰はこの作品によって流行作家となり,〈斜陽族〉という流行語も生じた。
執筆者:東郷 克美
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太宰治(だざいおさむ)の中編小説。敗戦後の1947年(昭和22)に発表され、ベストセラーとなり、敗戦によって没落した貴族をよぶ「斜陽族」という流行語を生んだ。母は最後の貴婦人として美しく死に、弟直治は生きる基盤のない貴族であることを嘆きつつ自殺する。1人残ったヒロインかず子は「人間は恋と革命のために生れて来たのだ」と、画家上原の私生児を身ごもり、道徳革命の完成を目ざして生きる。戦後の農地改革による太宰の生家津島家の没落が、日本の『桜の園(その)』を書こうという動機となったが、さらに太田静子のノートを手に入れて構想が定まった。滅亡への挽歌(ばんか)が第一主題で、それに比べて第二主題のかず子の道徳革命は観念的で弱いとされている。
[鳥居邦朗]
『『斜陽』(旺文社文庫・角川文庫・講談社文庫・新潮文庫)』
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