改訂新版 世界大百科事典 「ペステリ」の意味・わかりやすい解説
ペステリ
Pavel Ivanovich Pestel'
生没年:1793-1826
ロシアの革命家,デカブリストの指導者。東シベリア総督イワン・ペステリの子として生まれ,1805-09年ドイツのドレスデンで学んだあと,中央幼年学校に入学。卒業後ナポレオン戦争に参加し,外征も経験する。21年大佐に昇進し,ビャトカ連隊長に任命される。1816年デカブリストの最初の秘密結社である〈救済同盟〉に加入したあと,18年には第2の結社である〈福祉同盟〉の支部を,自分の勤務する南ロシアのトゥリチンにつくる。21年3月,さらにこれを発展させて,デカブリストの〈南方結社〉に改組し,その指導者となる。彼はロシアにおける農奴制と専制政治の即時廃止,共和国の樹立をめざした。ペステリが作成した〈ルスカヤ・プラウダRusskaya pravda〉と呼ばれる将来の共和国の憲法草案には,彼のいくつかのユニークな思想が反映されている。すなわち,20歳以上の男子すべてに平等に政治的権利が与えられ,身分的差別は廃止される(しかし女子には選挙権は与えられない)。国政の最高機関は一院制の議会にあり,これが5人のメンバーから成る国家評議会に行政権をゆだねる。また120名の終身議員が構成する最高会議が国政の監督に当たる。ロシアは単一の国家となり連邦制はとらない,などである。デカブリストの蜂起の前夜,トゥリチンで逮捕され,その後4人の指導的メンバーとともに絞首刑に処された。
執筆者:外川 継男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報