コショウ科サダソウ属Peperomiaの常緑多年草または一年草で,熱帯~亜熱帯地域を中心に約1000種が分布するが,観葉植物として栽培されるのは,熱帯アメリカ原産の多年草である。花は細長い棒状の穂状花序で,多数の花をつけるが,花被はなく,観賞価値は低い。花後は粘着性のある小さい液果をつけ,中に1種子を含む。ペペロミア・オブツシフォリアP.obtusifolia (L.) Dietr.は茎が立性でジグザグ状に伸び,鈍光沢のある濃緑色,多肉質葉を互生する。鈍頭卵円形葉で,長さ5~9cm,幅4~6cmとなる。園芸品種グリーン・ゴールドcv.Green Goldは,全体に黄~淡黄緑色の不規則斑が入り,観賞価値は高い。両種とも強健で,生長も早く,ヘゴ付け小~中鉢物として栽培される。ペペロミア・カペラタP.caperata Yunck.はブラジル原産の小型種で,草丈10~15cmで,ちりめん状の卵円形葉をつける。暗緑色のリトル・ファンタジーcv.Little Fantasyが普及しているが,変異が多く,より小型種のナナcv.Nana,暗緑褐色のニグラcv.Nigraなどがある。白覆輪種のワリエガータcv.Variegataはときに淡紅色もおびて美しいが,葉挿しでは緑葉に戻ってしまうのと,性質が弱く,生長が遅いのであまり普及していない。ペペロミア・セルペンス・ウァリエガータP.serpens Loud.cv.Variegataはジグザグ状の茎を長く伸ばす匍匐(ほふく)性種で,黄白~黄色の覆輪となる長い心臓形の多肉質葉を互生する。強健で,葉面も形よく並ぶのでつり鉢に向く。ペペロミア・グリセオアルゲンテアP.griseoargentea Yunck.は茎が短く,草丈15~25cmの半球状に育つ。葉は卵円形で,灰緑色で金属光沢がある。じょうぶで形よく育つ。ペペロミア・アルギレイアP.argyreia E.Morr.は多肉質の卵円形葉が楯状につき,濃緑色に灰白色斑が縦に入り美しい。watermelon peperomiaの英名がある。ペペロミアの仲間は,日照不足にも強く,繁殖も簡単で,室内園芸に向いている。鉢物のほか,テラリウムやテーブル装飾などの寄植えにも向く。10℃以上に保温する。
執筆者:高林 成年
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
コショウ科(APG分類:コショウ科)ペペロミア属の総称。多肉質の草本で、多くは常緑多年草であるが、一年草もある。アメリカ大陸を中心に、熱帯から亜熱帯に1000種以上分布し、その多くは着生種である。以下の各種がよく栽培される。オブツシフォリアP. obtusifolia A.Dietr.はベネズエラ、西インド諸島原産。葉は卵円形で多肉質。葉に黄色または黄白色の散斑(ちりふ)が入るグリーンゴールドcv. Green goldとともに、観葉植物として栽培される。カペラータP. caperata Yunckerはチヂミバシマアオイソウともいう小形種で、葉は卵円形で、縮緬(ちりめん)状になり、暗緑色。ワリエガータcv. Variegataは、葉は白色または淡紅色の縁どりとなる。ホワイトエメラルドcv. White emeraldは白、灰白、淡紅色が不規則に入る斑(ふ)入り種で、変異が多く、レッドリップル、ニグラ、ナナなどの品種がある。シマアオイソウP. argyreia (Miq.) E.Morr.は葉の縞(しま)模様からウォーターメロン・ペペロミアwatermelon peperomia(スイカペペロミアの意)ともいい、ブラジル南部原産。明治の中ごろに導入された。セルペンスP. serpens (Sw.) Loud.と、その斑入り種cv. Variegataは茎は匍匐(ほふく)性でよく伸び、吊(つ)り鉢に向く。四国、九州の南部にはサダソウP. japonica Makinoが分布するが、観賞価値はない。
本属の植物は葉挿し繁殖が可能であるが、斑入り種は、茎挿しか株分けでないと斑が消失することがある。テラリウムや寄せ植えなど、室内園芸にも向き、ミニ観葉植物として優れている。
[高林成年 2018年7月20日]
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