ホオズキ(英語表記)Japanese lantern plant
Physalis alkekengi L.var.francheti (Mast.) Hort.

改訂新版 世界大百科事典 「ホオズキ」の意味・わかりやすい解説

ホオズキ
Japanese lantern plant
Physalis alkekengi L.var.francheti (Mast.) Hort.

人家に栽培されるナス科の多年草。地下には長い根茎がある。茎は無毛で,高さ60~90cm。葉は互生し,節ごとに2枚一組の葉がつく場合が多い。葉は広卵形で,縁にはやや欠刻状の大きな鋸歯がある。長さ5~12cm,幅3~9cm。6~7月,葉腋(ようえき)に白色の花を1個つける。花冠は浅く5裂し,径約1.5cm。萼筒は杯形で浅く5裂し,緑色。花後生長して液果を包みこみ,鮮やかな赤い色に変わる。液果は径1~1.5cm,球形で赤色。中には多数の小さな種子がある。微量のアルカロイドを含み,食べると苦い。子どもが中身を取り除いて口に含み,鳴らして遊ぶのに使う。植物体はフィサリンphysalinという苦味成分を含んでいるが,ゆでて苦みをとれば食用となる。根茎にチグロイルオキシトロパンtigloyloxytropaneを含む。また根茎には子宮緊縮作用があり,漢方では酸漿根(さんしようこん)と呼ぶ。宿存性の赤い萼も薬用とされ,解熱や解毒の効果があるといわれる。基本変種のヨウシュホオズキvar.alkekengi(英名bladder cherry)はヨーロッパから中央アジアにかけて分布し,全体に毛が多く鋸歯はあまり目だたない。
執筆者:

日本で観賞用に栽培されるホオズキ類は,ホオズキが最も多く,これの小型品種をサンズンホオズキ,早生大果品種をタンバホオズキという。ショクヨウホオズキP.pruinosa Bailey(英名strawberry tomato)やP.pubescens L.は北アメリカ原産で,熟した果実は甘みがあり,生食や煮食される。このほか,熱帯アメリカ原産の一年生種で萼が赤く着色しないセンナリホオズキP.angulata L.が帰化している。ホオズキは地下茎によってきわめてよく繁殖し,春に株分けをして育てるが,挿木や実生でも栽培される。ホオズキカメムシ,ニジュウヤホシテントウなどの害虫がつきやすい。
執筆者:

ホオズキには異称が多く,アカカガチ,カガチ,カガミコ,ヌカズキ,ホオズキなどがあった。古く記紀には八岐大蛇(やまたのおろち)の目の形容として赤酸漿(あかかがち)の語が見え,平安時代になるとヌカズキやホオズキの語も現れた。ヌカズキは薬用とされた実が苦いことからニガツキとよばれ,それがなまった語という。ホオズキの語源には,子どもの紅顔にたとえたという説や,実を鳴らすときの顔のようすから出たとする頰突(ほおづき)説のほか,《大和本草》には蝥(ほう)という虫がつくから蝥付だという説もある。おそらく頰や顔の色,形から出たのであろう。江戸時代には,ホオズキは手遊びや薬用としてひじょうに愛用され,一時は江戸の町のホオズキ売りが規制されたほどであった。手遊びには,ホオズキの種子をとり出した実を口に含んで鳴らすものと,実を吹き上げて遊ぶものとがあり,種子をもみ出すときには〈根はねんねん出ろ,種はたんねん出ろ〉という唱え言もあった。ホオズキは鬼灯とも書き,七夕や盆には庭先や仏壇に飾られ,盆の精霊迎えにホオズキちょうちんを使用する。さらに魂(たま)ホオズキがなまって丹波ホオズキと呼ばれたりすることなどから,ホオズキは精霊の依代(よりしろ)だったと考えられる。このため,ホオズキを屋敷に植えると病人や死人が出るといって忌む所が多い。また,夜ホオズキを鳴らすとヘビや化物がくるといって嫌う。現在,浅草の浅草寺の境内では四万六千日(しまんろくせんにち)の縁日にホオズキ市が開かれているが,以前は雷よけとして赤トウモロコシが売られていた。ホオズキの青い実を陰干しにして鎮静剤とする風は平安時代に見られたが,その他の薬用として,煎じて飲んだり根を子宮に入れて堕胎剤とされたり,逆に安産の妙薬,利尿剤,小児の解熱,頭痛,腹痛,のどの薬など用途が広く,とくに江戸時代には多用された。また元日の朝にホオズキを食べると腹病みや脚気にならないという俗信もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホオズキ」の意味・わかりやすい解説

ホオズキ
ほおずき / 酸漿
鬼灯
[学] Physalis alkekengi L. var. franchetii Makino

ナス科(APG分類:ナス科)の多年草。根茎は長く地中に伸びて繁殖する。高さ60~80センチメートル。葉は節ごとに2枚ずつついて互生し、卵形で粗い鋸歯(きょし)があり、葉柄がある。6~7月、葉腋(ようえき)に白色で径約2センチメートルの5弁花を1個ずつ開く。花期後、萼片(がくへん)は大きくなって果実を包み、熟すと鮮明な朱赤色になる。果実を観賞するほか、果実から種子をもみ出し、口に入れて音をたてて遊ぶため、栽培される。普通栽培される品種は大実のタンバホオズキで、鉢や花壇にも植えられる。そのほか、草丈の低いサンズンホオズキ、包葉が披針(ひしん)形で穂状に垂れ下がるヨウラクホオズキなどがある。漢方では根を酸漿根(さんしょうこん)と称し、茎葉とともに咳(せき)どめ、利尿、解熱などに用いる。

 ホオズキ属は100種以上ある。センナリホオズキは熱帯アメリカ原産の一年草。果実は小さいが、緑色で多数つく。ヨーロッパ原産のヨウシュホオズキや北アメリカ原産のショクヨウホオズキなど食用になる種類もある。栽培は、春に伸び出した新芽を地下茎ごと掘り上げ、鉢植えや地植えにし、日当りのよい場所で育てる。

[神田敬二 2021年7月16日]

文化史

『古事記』にはアカカガチの名で載り、八岐大蛇(やまたのおろち)の目に例えられている。平安時代にはホホツキとよばれ、『本草和名(ほんぞうわみょう)』や『和名抄(わみょうしょう)』にその名がある。江戸時代、谷川士清(ことすが)は、ホは火(ひ)、ツキは染まる意味の著(つき)で、実が赤く成熟することに由来すると説いた。ホオズキの実を膨らませる遊びは『栄花(えいが)物語』に記されている。ホオズキの野生はたいてい人里で、本来は日本には自生しなかったとする見解もある。中国では漢の『爾雅(じが)』に初見し、『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』(500ころ)をはじめとする本草書には、利尿や解熱剤としての効用があげられ、また、葉には苦味があるが、実とともに食用にされると記されている。日本でも江戸時代、果実を塩漬けにした。

 なお、ショクヨウホオズキは、黄色の果実を生食あるいは砂糖漬けにして食べる。

[湯浅浩史 2021年7月16日]


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百科事典マイペディア 「ホオズキ」の意味・わかりやすい解説

ホオズキ

(1)自生もしているが多くは栽培されるナス科の多年草。高さ60〜90cm。地下に根茎があり,葉は先のとがった卵形で縁にあらい鋸歯(きょし)がある。初夏,葉腋にナスに似た淡黄色の花を1個つける。花がすむと,径1〜1.5cmの球形の果実になるが,初め小さかった萼(がく)が増大して袋状に果実を包み,熟すと赤くなる。株分け,さし芽,実生(みしょう)などでふやす。根,果実は薬用になり,また果実は中身を抜き,口に含んで鳴らすおもちゃとなる。近縁のセンナリホオズキは熱帯アメリカ原産で,果実は小さく,多数つくが,熟しても緑色で赤くならない。(2)海産巻貝の卵嚢もホオズキといわれる(ウミホオズキ)。

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世界大百科事典(旧版)内のホオズキの言及

【堕胎薬】より

…子宮収縮薬のほか,下剤で腸運動を亢進して反射的に子宮を収縮させ堕胎をおこす方法もとられたが,副作用がつよく母体にとって危険をともなった。日本ではホオズキの根が用いられたが,薬効成分は未詳である。今日では,子宮収縮作用をもったプロスタグランジンFが座薬として用いられる。…

※「ホオズキ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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