ホトトギス(鳥)(読み)ほととぎす(英語表記)cuckoo

  • ほととぎす / 杜鵑

翻訳|cuckoo

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

広義には鳥綱ホトトギス目ホトトギス科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Cuculidaeには約127種が含まれる。全長16~70センチメートル。六つの亜科に分けられ、形態はかなり多様であるが、多くの種はやや長い嘴(くちばし)、短い足、比較的長い尾をもち、灰色や黒の羽色をしている。全世界に広く分布し、森林から半砂漠の環境にまですんでいる。ホトトギス類というと托卵性(たくらんせい)が有名であるが、この科のなかでその習性をもつのは、ホトトギス亜科の全種とミチバシリ亜科のうち3種だけである。ほかの種は自分で巣をつくって雛(ひな)を育てる。

 種としてのホトトギスCuculus poliocephalusはホトトギス亜科に属し、全長約28センチメートル、日本にすむホトトギス類のなかでは最小種である。体上面が灰色、下面は白黒の横縞(よこじま)模様をしているが、雌のなかには、全体に赤褐色の羽色をした赤色型の個体もいる。アジアの東部で繁殖し、冬季には東南アジア方面に渡る。日本には5月の中旬ごろに、北海道の中部から北部を除く各地に渡来し、繁殖する。カッコウ同様、典型的な托卵性の鳥で、自分では巣をつくらずに、ウグイスやミソサザイなどの巣に卵を産み込み、その後の世話をその巣の親鳥に任せてしまう。卵の色はウグイスのと同じチョコレート色で、1巣に産み込む卵の数は普通1個である。この卵はウグイスなどの卵よりも1、2日早く孵化(ふか)し、孵化した雛は、まだ孵化していない他種の卵を背中にのせて巣外にほうり出してしまう。こうして巣内を独占し、やがて巣の親鳥よりも大きく成長していく。雄は「キョッキョ、キョキョキョ」と鳴き、この声は「テッペンカケタカ」「特許許可局(とっきょきょかきょく)」などと聞きなされる。夜間に鳴くこともある。採食は樹上で行い、おもにガの幼虫をとって食べる。

[樋口広芳]

民俗

ホトトギスは旧暦5月の田植を知らせる渡り鳥である。古く『古今和歌集』雑躰(ざってい)、誹諧歌(はいかいか)に、「いくばくの田をつくればか郭公(ほととぎす)しでの田長(たをさ)を朝な朝な呼ぶ」という一首がみえる。ホトトギスの鳴き声を「しでのたをさ」と聞き、朝な朝な田長を呼ぶのであるから、それほどの田を耕作しているのであろうか、と詠んだもの。「死出の田長」はホトトギスの異名であるが、「賤(しず)の田長」の転訛(てんか)ともいう。古代中国では、ホトトギスは、蜀(しょく)の王の杜宇(とう)の魂が化したものといわれ、鳴き始めるのを聞いて、農事にかかった。『荊楚歳時記(けいそさいじき)』には、杜鵑(ほととぎす)の初鳴きを聞くと離別があるとか、鳴き声をまねると厠(かわや)に血を吐くと記す。わが国でも、1日に八千八声鳴くとして、不気味な鳥とされ、声を忌む風があった。「死出」が示すように、「死」との連想も強い。八丈島では、旧暦7月15日の盆行事が終わると、ホトトギスは消えうせるといい、死者の霊魂との結び付きを伝える。また、ホトトギスは山芋の成熟も知らせた。田植の節目の性格の強い旧暦5月5日の節供には、山芋を掘り、それを食べる地方もあるが、昔話の「時鳥(ほととぎす)と兄弟」には、この日の行事を背景とする類話が多い。

[小島瓔

文学

鶯(うぐいす)や雁(かり)とともに、和歌に詠まれる代表的な鳥。時鳥は、4月は山や山里にいて、5月になると人里に飛来して梢(こずえ)で声高く鳴くとされ、「時鳥 鳴く五月(さつき)には 菖蒲草(あやめぐさ) 花橘(はなたちばな)を 玉に貫(ぬ)き 縵(かづら)にせむと」(『万葉集』巻3・山前王(やまさきのおおきみ))、「いつの間に五月来(き)ぬらむあしひきの山時鳥今ぞ鳴くなる」(『古今集』夏)などと詠まれ、時鳥の飛来を待ち、その初声を聞くのが、大きな関心事となった。また、花橘、卯(う)の花、藤(ふじ)の花、菖蒲などと配合され、「橘の花散る里の時鳥片恋しつつ鳴く日しぞ多き」(『万葉集』巻3・大伴旅人(おおとものたびと))、「時鳥我とはなしに卯の花の憂き世の中に鳴きわたるらむ」(『古今集』夏・凡河内躬恒(おおしこうちのみつね))などと詠まれ、五月雨(さみだれ)の夜や、暁方のまだ夜が深い時刻に鳴くともいわれる。時鳥の声を聞くと、物思いや懐旧の情をかき立てられるといわれ、あるいは、場所を定めず鳴くので、多情の鳥として恨まれもした。鳴き声は「しでのたをさ」(諸説あるが、死出の田長と解する説が多い)とされ、「死出の山越えて来つらむ時鳥恋しき人の上語らなむ」(『拾遺集(しゅういしゅう)』哀傷・伊勢(いせ))など、冥土(めいど)に通う鳥ともされた。『源氏物語』「花散里(はなちるさと)」は、このような時鳥の類型を物語の主題に即して語った典型的な例である。『枕草子(まくらのそうし)』「鳥は」の段には、「いつしかしたり顔にも聞えて、卯の花、花橘などに宿りして、はた隠れたるも、妬(ねた)げなる心ばへなり。五月雨の、短き夜に寝覚めをして、いかで人より先に聞かむ、と待たれて、夜深くうち出(い)でたる声の、らうらうじう愛敬(あいぎゃう)づきたる、いみじう心あくがれ、せむかたなし」も、時鳥への愛着の念が端的に記されたものである。時鳥への関心は後世にまで及び、例の時鳥の鳴く声を待つ態度から信長・秀吉・家康の性格を語る挿話は、『甲子夜話(かっしやわ)』に収められている。季題は夏。「ほととぎす大竹藪(やぶ)を漏る月夜」(芭蕉(ばしょう))。

[小町谷照彦]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

関連語をあわせて調べる

今日のキーワード

ノーブレスオブリージュ

《「ノブレスオブリージュ」とも》身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという、欧米社会における基本的な道徳観。もとはフランスのことわざで「貴族たるもの、身分にふさわしい振る舞...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android