一般に穹窿(きゅうりゅう)と訳され、平天井に対して、アーチの原理によって構成される曲面天井を総称する。石、れんが、またはコンクリート造が一般だが、木材や漆喰(しっくい)で模倣したものもある。
ボールト架構の技術は、エトルリア人の建築技術を受け継いだ古代ローマ人によって発展させられたが、以来、中世、近世を通じて建築の組積構造における基本的な構法であるとともに、それぞれの時代様式を決定する重要な要素となっている。おもな種類に次のものがある。(1)筒形ボールト barrel v., tunnel v. 断面が半円形または円弧形をなすもので、トンネル・ボールトともいい、ときには尖頭(せんとう)アーチ形の場合もある。(2)交差ボールト cross v., groin v. 交差する同じ形の二つの筒形ボールトで構成される。交差によって生じる稜線(りょうせん)により、ボールト自体の重量が四隅の支持点に分散されるため、筒形ボールトに比べて容積のより大きな空間の構成を可能にする。筒形ボールトおよび交差ボールトを用いた代表的事例としては、ローマに一部現存するコンスタンティヌスのバシリカがあげられる。(3)リブ・ボールト rib v., ribbed v. 交差ボールトの稜線に沿って対角線をなすリブ(肋骨(ろっこつ)状アーチ)を取り付けて補強したものである。リブによって分割された三角形のボールトの面には、軽量の材料が使用可能となる。また、このボールト面の数によって、4分ボールトあるいは6分ボールトとよばれる。このリブ・ボールトの開発は、ゴシック式教会堂建築に大きな改革をもたらした。(4)星形ボールト stellar v. 主要なリブに枝状リブが加わり、それらの放射線が星形を形成しているもので、その事例はイギリス後期ゴシックのヨーク大聖堂その他にみられる。(5)網目ボールト net v. リブが天井全体に菱形(ひしがた)の網目状に張り巡らされたもので、これもイギリス後期ゴシックのグロスター大聖堂などにみられる。(6)扇状ボールト fan v. 積柱や持送り(ブラケット)を要(かなめ)としてリブが扇状に広がり、隣接する同じ形式のものと次々に連結して扇状のボールトが形成される。ケンブリッジのキングズ・カレッジ礼拝堂にその代表例がみられる。(7)ダイヤモンド・ボールト diamond v., prismatic v. リブを用いず、三角形を連結した多面体で形成されたボールトで、ダイヤモンドの結晶に似た構造である。中世末期、おもにバルト海沿岸でれんがを用いて多くつくられた。(8)鍾乳(しょうにゅう)石状ボールト stalactite v. イスラム建築特有の階段状に積み重ねられたボールトで、鍾乳洞内の天井面に類似するためこの名称が用いられる。この特異なデザインはイスラム建築の幻想的神秘感を助長する。
[濱谷勝也]
イギリスの指揮者。オックスフォード大学卒業後ライプツィヒ音楽院に留学、ニキシュに指揮法を学ぶ。1918年ロイヤル・フィルを指揮してロンドンでデビュー、以後BBC交響楽団、ロンドン・フィルなどの常任指揮者を務め、イギリスのオーケストラの水準向上に寄与、37年サーの称号を授けられた。端正な芸風の持ち主で、古典から現代まで広いレパートリーを誇っていたが、とくに現代イギリス音楽の理解者として知られ、多くの作品を初演、紹介した。
[岩井宏之]
曲面の天井または屋根。穹窿(きゆうりゆう)ともいう。本来は土,煉瓦,石,コンクリートなどで造ったものをいうが,木,布,ガラス,合成樹脂,金属などの軽い材料で造ったものも一般にボールトと呼ぶ。その基本的なものはトンネル・ボールト(バレル・ボールトbarrel vault)とドーム(円蓋(えんがい))で,前者はエジプトに紀元前1200年ごろのものがある。後者はそれよりも古くから知られ,またイグルー(エスキモーの雪の家),中近東や中央アフリカの農民住宅などにも見られる。煉瓦,石,コンクリートのボールトが,大きな荷重を支持でき,大規模な屋根や天井を造るのに適しており,また変化にとむ空間を造りあげるという特色を活用したのは,古代ローマである。ローマ人は2本のトンネル・ボールトを直角に組み合わせた交差ボールトcross vaultや角(かく)ドームcloister vaultなど各種のボールトを使用した。古代ペルシアの伝統を発展させた中東のイスラム諸国では,鍾乳石のような装飾をもつ美しいボールトやネギ坊主形の幻想的なドームを考案した。西欧ではとくに防火上の理由で,木造の天井に代わって11世紀後半から聖堂で石造のボールトを用いるようになった。ロマネスク建築では各種のボールトを造ったが,ゴシックではボールトの表面に突出したアーチをつけたリブ・ボールトrib vaultを使用し,中世末期のドイツ,とくにイギリスできわめて美しいボールト(ファン・ボールトfan vaultなど)を造りあげた。近世以降はリブのないボールトを再び用いたが,これらは石や煉瓦造なので,建設に長い工期と多額の費用を必要とした。19世紀後半以降は従来より軽くて大きなボールトを,鉄とガラスで経済的に造れるようになった。
執筆者:飯田 喜四郎
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…また,二階床・三階床も通例木造であった。しかし,アーチの原理を応用して,石や煉瓦やコンクリートで曲面天井(ボールト)をつくる方法も古代から発達し,建物の本体を不燃化することが可能になった。曲面天井の一例であるドーム建築では,直径43mまでの実例がある。…
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[教会堂建築の新様式]
ゴシック美術の様式はまず建築,ことに教会堂建築によって実現されたが,これと協和して形成された彫刻,絵画,工芸に対しても,総括的にこの様式の名称が適用される。ゴシック教会堂建築の特徴としては,一般に構造技術上の3要素,すなわちリブ・ボールトribbed vault,尖頭アーチpointed arch,フライイング・バットレスflying buttress(飛控え)があげられ,その組織的適用によって,仰高性のいちじるしい建築様式が成立しているとされる(ゴシック建築のうちには,木造天井を架して,しかも仰高性をあらわしている例もあるが,様式形成の主導力となったのは石造ボールト建築である)。この3要素はすでにロマネスク建築にもあった。…
…ギリシア建築の天井はあまりよく知られていないが,神殿の入口部分には大理石板を用いた格天井が使われていた。ローマ建築では,天然コンクリートを用いた巨大なボールトが用いられ,その表面は格天井のような浮彫で飾られていた。ポンペイの浴場に見られるように,こうした天井はきわめて豪華に装飾されていたと考えられる。…
…天井に施された絵画をいう。ここで天井というのは,木造建築に多い平天井のほか,石材や煉瓦などを用いるボールト(穹窿),円蓋,半円蓋など,要するに建築空間の上部を覆う面をさす。 天井画については,そこに何が描かれるかという問題といかに描かれるかという問題がある。…
※「ボールト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
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