イギリスの物理学者。ロンドンに生まれる。第一次世界大戦に海軍将校として従軍後、マグダレン大学へ入学、1923年に修士号取得。1933年までキングズ・カレッジのフェローとしてキャベンディッシュ研究所のラザフォードの下で研究。1932年オッキャリーニGiuseppe Occhialini(1907―1993)とともに霧箱を改良し、計数管で写真撮影のタイミングをとるようにした。これにより宇宙線のシャワー現象を発見、また、シャワーによって生じる正・負荷電粒子の質量がほぼ等しいことを検証し、同年カール・アンダーソンが発見した陽電子の存在を裏づけた。1933年バークベック大学物理学教授となり、γ(ガンマ)線による電子対生成の撮影に成功した。これらの業績により1948年にノーベル物理学賞を受賞した。1937年マンチェスター大学物理学教授となる。第二次世界大戦中は、対Uボート作戦、オペレーションズ・リサーチによる作戦分析に従事。1953年よりインペリアル・カレッジ教授、1963年まで同物理学科長。第二次世界大戦後はイギリス科学労働者協会、世界科学者連盟に加わる。著書の『恐怖・戦争・爆弾』(1948)は日本への原爆投下を冷戦とのかかわりでとらえたものとして有名である。
[山崎正勝]
『田中慎次郎訳『恐怖・戦争・爆弾――原子力の軍事的・政治的意義』(1951・法政大学出版局)』▽『P・M・S・ブラッケット著、岸田純之助・立花昭訳『戦争研究』(1964・みすず書房)』
アメリカの物理学者。分光学の専門家。カリフォルニア州クレアモント生まれ。1922年から1927年までカリフォルニア大学バークリー校、1936年からアメリカ国立衛生研究所に勤務した。1922年に水素原子の線スペクトルの遠赤外線領域を表すブラケット系列を発見した。ブラケット系列とは、水素の系列をなすスペクトルのうちで、主量子数4のレベルに遷移する電子によって発生するスペクトル系列である。
[編集部 2023年7月19日]
イギリスの物理学者。海軍の現役将校としての教育を受け,第1次世界大戦に士官として従軍,退役後,ケンブリッジのラザフォードのもとで物理学を学ぶ。1921年同大学を卒業,霧箱を用いた研究に取り組み,24年,α粒子による窒素原子核の変換過程を写真に撮影,これは原子核の人工変換の最初の写真であった。その後イタリアのG.P.S.オキアリーニと共同して宇宙線中の高エネルギー粒子の研究を開始,計数管制御の霧箱を用いて宇宙線のシャワー現象を発見すると同時に,そのシャワー中にほぼ同数の正と負の電子が現れることも明らかにし,さらに高エネルギーγ線からの電子対生成と,その逆過程である電子対消滅による低エネルギーγ線の放出を示唆,実験的にも証明した。これらの研究によって,48年ノーベル物理学賞を受賞。1933年からロンドンのバークベック・カレッジの教授,37年マンチェスター大学教授,第2次大戦中は,海軍本部の海軍作戦研究所の所長もつとめ,オペレーションズ・リサーチに統計学的手法を導入した。53年からは,ロンドンのインペリアル・カレッジの教授となり,核軍縮を目ざす科学者の平和運動でも活躍した。著書《戦争研究》は邦訳されている。
執筆者:日野川 静枝
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[起源]
第2次世界大戦の直前から戦中にかけて,アメリカ軍およびイギリス軍が作戦研究(オペレーションズリサーチ)に利用したことが直接的な起源である。 1930年代の終りにイギリス空軍のための防空の研究が開始され,ノーベル賞の受賞者である物理学者ブラケットP.M.S.Blackett(1897‐1974)を中心とするブラケットサーカスと称されたグループが,新しく発明されたレーダーを用い,ドイツの爆撃機に対する防御問題や対空火器の照準などに関して研究し,多くの成果をあげた。この集団は生理学者,数理物理学者,天体物理学者,数学者,陸軍士官,測量技師からなり,きわめて学際的な顔ぶれであった。…
… 大陸移動説に対する有力な証拠は1950年代初めころから古地磁気学によってもたらされた。イギリスのブラケットPatric Maynard Stuart Blackett(1897‐1974)とランコーンS.Keith Runcorn(1922‐95)の両グループは世界各地の各種の岩石の自然残留磁気を測定し,それらが大陸の緯度変化と回転の定量的な証拠であることを示した。インドの北上やイベリア半島の回転などがはっきり示された。…
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[起源]
第2次世界大戦の直前から戦中にかけて,アメリカ軍およびイギリス軍が作戦研究(オペレーションズリサーチ)に利用したことが直接的な起源である。 1930年代の終りにイギリス空軍のための防空の研究が開始され,ノーベル賞の受賞者である物理学者ブラケットP.M.S.Blackett(1897‐1974)を中心とするブラケットサーカスと称されたグループが,新しく発明されたレーダーを用い,ドイツの爆撃機に対する防御問題や対空火器の照準などに関して研究し,多くの成果をあげた。この集団は生理学者,数理物理学者,天体物理学者,数学者,陸軍士官,測量技師からなり,きわめて学際的な顔ぶれであった。…
…これに対する解答は40年代から50年代にかけて提供された。L.ネールは48年フェリ磁性の研究,49年,51年には熱残留磁化の研究を相次いで発表し,理論的な基礎を築き,52年イギリスのブラケットP.M.S.Blackettは非常に弱い磁化まで測定できる高感度無定位磁力計を作りあげた。さらに53年R.A.フィッシャーは測定値のばらつきの程度の統計的な解析方法を示した。…
… 大陸移動説に対する有力な証拠は1950年代初めころから古地磁気学によってもたらされた。イギリスのブラケットPatric Maynard Stuart Blackett(1897‐1974)とランコーンS.Keith Runcorn(1922‐95)の両グループは世界各地の各種の岩石の自然残留磁気を測定し,それらが大陸の緯度変化と回転の定量的な証拠であることを示した。インドの北上やイベリア半島の回転などがはっきり示された。…
※「ブラケット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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