ブラケット(読み)ぶらけっと(その他表記)Patrick Maynard Stuart Blackett

デジタル大辞泉 「ブラケット」の意味・読み・例文・類語

ブラケット(bracket)

建築で、持ち送りのこと。
壁面に取り付けて照明器具などを支えるもの。また、そのように取り付けた照明器具。
印刷の約物で、括弧かっこの一。ある語句・文を他と区別するために用いられる。[ ]など。→括弧
歯列矯正で、矯正用ワイヤーを固定するために歯に取り付ける小さな器具。

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精選版 日本国語大辞典 「ブラケット」の意味・読み・例文・類語

ブラケット

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] bracket )
  2. 電線などを適当な高さ、間隔に保持するために電柱に取りつける横木、または金属製の横板。〔電気工学ポケットブック(1928)〕
  3. 壁などの鉛直な面に取りつけて照明器具を支えるもの。また、その照明器具。
    1. [初出の実例]「板燭台(ブラケット)の燈がぼんやりともってゐる」(出典:壁の中の風景(1953)〈小山いと子〉)
  4. 棚などをささえる横材。腕木。腕金。持送(もちおくり)
  5. 印刷で特殊の語句を区別するために用いる記号活字の一種。角括弧(かっこ)。[ ]など。〔造本と印刷(1948)〕

ブラケット

  1. ( Patrick Maynard Stuart Blackett パトリック=メイナード=スチュアート━ ) イギリスの原子物理学者。霧箱の技術を開発し、一九四八年、原子核および宇宙線の研究によってノーベル物理学賞受賞。(一八九七‐一九七四

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラケット」の意味・わかりやすい解説

ブラケット(イギリスの物理学者 Patrick Maynard Stuart Blackett)
ぶらけっと
Patrick Maynard Stuart Blackett
(1897―1974)

イギリスの物理学者。ロンドンに生まれる。第一次世界大戦に海軍将校として従軍後、マグダレン大学へ入学、1923年に修士号取得。1933年までキングズ・カレッジのフェローとしてキャベンディッシュ研究所ラザフォードの下で研究。1932年オッキャリーニGiuseppe Occhialini(1907―1993)とともに霧箱を改良し、計数管で写真撮影のタイミングをとるようにした。これにより宇宙線のシャワー現象を発見、また、シャワーによって生じる正・負荷電粒子の質量がほぼ等しいことを検証し、同年カール・アンダーソンが発見した陽電子の存在を裏づけた。1933年バークベック大学物理学教授となり、γ(ガンマ)線による電子対生成の撮影に成功した。これらの業績により1948年にノーベル物理学賞を受賞した。1937年マンチェスター大学物理学教授となる。第二次世界大戦中は、対Uボート作戦、オペレーションズ・リサーチによる作戦分析に従事。1953年よりインペリアル・カレッジ教授、1963年まで同物理学科長。第二次世界大戦後はイギリス科学労働者協会、世界科学者連盟に加わる。著書の『恐怖・戦争・爆弾』(1948)は日本への原爆投下を冷戦とのかかわりでとらえたものとして有名である。

[山崎正勝]

『田中慎次郎訳『恐怖・戦争・爆弾――原子力の軍事的・政治的意義』(1951・法政大学出版局)』『P・M・S・ブラッケット著、岸田純之助・立花昭訳『戦争研究』(1964・みすず書房)』


ブラケット(アメリカの物理学者 Frederick Sumner Brackett)
ぶらけっと
Frederick Sumner Brackett
(1896―1988)

アメリカの物理学者。分光学の専門家。カリフォルニア州クレアモント生まれ。1922年から1927年までカリフォルニア大学バークリー校、1936年からアメリカ国立衛生研究所に勤務した。1922年に水素原子線スペクトルの遠赤外線領域を表すブラケット系列を発見した。ブラケット系列とは、水素の系列をなすスペクトルのうちで、主量子数4のレベルに遷移する電子によって発生するスペクトル系列である。

[編集部 2023年7月19日]

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改訂新版 世界大百科事典 「ブラケット」の意味・わかりやすい解説

ブラケット
Patrick Maynard Stuart Blackett
生没年:1897-1974

イギリスの物理学者。海軍の現役将校としての教育を受け,第1次世界大戦に士官として従軍,退役後,ケンブリッジのラザフォードのもとで物理学を学ぶ。1921年同大学を卒業,霧箱を用いた研究に取り組み,24年,α粒子による窒素原子核の変換過程を写真に撮影,これは原子核の人工変換の最初の写真であった。その後イタリアのG.P.S.オキアリーニと共同して宇宙線中の高エネルギー粒子の研究を開始,計数管制御の霧箱を用いて宇宙線のシャワー現象を発見すると同時に,そのシャワー中にほぼ同数の正と負の電子が現れることも明らかにし,さらに高エネルギーγ線からの電子対生成と,その逆過程である電子対消滅による低エネルギーγ線の放出を示唆,実験的にも証明した。これらの研究によって,48年ノーベル物理学賞を受賞。1933年からロンドンのバークベック・カレッジの教授,37年マンチェスター大学教授,第2次大戦中は,海軍本部の海軍作戦研究所の所長もつとめ,オペレーションズ・リサーチに統計学的手法を導入した。53年からは,ロンドンのインペリアル・カレッジの教授となり,核軍縮を目ざす科学者の平和運動でも活躍した。著書《戦争研究》は邦訳されている。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「ブラケット」の意味・わかりやすい解説

ブラケット

英国の物理学者。初め海軍将校。ケンブリッジ大学を出て,1923年―1933年ラザフォードの下で研究,1924年原子核の人工変換の最初の霧箱写真を撮影,1932年宇宙線のシャワーを発見。1933年ロンドン大学,1937年マンチェスター大学各教授。第2次大戦中は軍事技術を研究,オペレーションズリサーチの先駆をなした。1953年―1963年王立理工科大学物理学部長,1965年王立協会長。社会的関心も深く,《原子力の軍事的・政治的影響》(1948年),《戦争研究》(1962年)等の著書がある。1948年ノーベル物理学賞。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブラケット」の意味・わかりやすい解説

ブラケット
Blackett, Patrick Maynard Stuart , Baron

[生]1897.11.18. ロンドン
[没]1974.7.13. ロンドン
イギリスの物理学者。ケンブリッジ大学卒業後 (1921) ,キャベンディッシュ研究所所員,ロンドン大学教授 (33) ,マンチェスター大学教授 (37) などを歴任。原子核崩壊の研究で知られる。ウィルソンの霧箱を改良して宇宙線の研究に取組み,安定原子核の崩壊を霧箱写真でとらえる。このような核崩壊は以前にも観測されていたが,彼の実験で初めて明確な説明が与えられた。 1933年に宇宙線から電子の対生成と対消滅を観察し,また,第2次世界大戦中にはオペレーションズ・リサーチのグループを編成して軍事研究を行なった。 48年ノーベル物理学賞受賞。 69年男爵に叙せられた。

ブラケット

持送り」のページをご覧ください。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「ブラケット」の解説

ブラケット【bracket】

➀壁に取り付けた照明器具。
➁持ち送り。⇒持ち送り

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「ブラケット」の解説

ブラケット

ISA、PCI、AGPなどの拡張カードをケースに固定するための金属板。一般的に、ブラケットをねじ留めしてケースに固定する。

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リフォーム用語集 「ブラケット」の解説

ブラケット

柱や梁から横に出した、軒や棚を支える受け木の事を言うが、壁面に取り付けるタイプの照明器具の事も指す。

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世界大百科事典(旧版)内のブラケットの言及

【オペレーションズリサーチ】より


[起源]
 第2次世界大戦の直前から戦中にかけて,アメリカ軍およびイギリス軍が作戦研究(オペレーションズリサーチ)に利用したことが直接的な起源である。 1930年代の終りにイギリス空軍のための防空の研究が開始され,ノーベル賞の受賞者である物理学者ブラケットP.M.S.Blackett(1897‐1974)を中心とするブラケットサーカスと称されたグループが,新しく発明されたレーダーを用い,ドイツの爆撃機に対する防御問題や対空火器の照準などに関して研究し,多くの成果をあげた。この集団は生理学者,数理物理学者,天体物理学者,数学者,陸軍士官,測量技師からなり,きわめて学際的な顔ぶれであった。…

【大陸移動説】より

… 大陸移動説に対する有力な証拠は1950年代初めころから古地磁気学によってもたらされた。イギリスのブラケットPatric Maynard Stuart Blackett(1897‐1974)とランコーンS.Keith Runcorn(1922‐95)の両グループは世界各地の各種の岩石の自然残留磁気を測定し,それらが大陸の緯度変化と回転の定量的な証拠であることを示した。インドの北上やイベリア半島の回転などがはっきり示された。…

【オペレーションズリサーチ】より


[起源]
 第2次世界大戦の直前から戦中にかけて,アメリカ軍およびイギリス軍が作戦研究(オペレーションズリサーチ)に利用したことが直接的な起源である。 1930年代の終りにイギリス空軍のための防空の研究が開始され,ノーベル賞の受賞者である物理学者ブラケットP.M.S.Blackett(1897‐1974)を中心とするブラケットサーカスと称されたグループが,新しく発明されたレーダーを用い,ドイツの爆撃機に対する防御問題や対空火器の照準などに関して研究し,多くの成果をあげた。この集団は生理学者,数理物理学者,天体物理学者,数学者,陸軍士官,測量技師からなり,きわめて学際的な顔ぶれであった。…

【古地磁気】より

…これに対する解答は40年代から50年代にかけて提供された。L.ネールは48年フェリ磁性の研究,49年,51年には熱残留磁化の研究を相次いで発表し,理論的な基礎を築き,52年イギリスのブラケットP.M.S.Blackettは非常に弱い磁化まで測定できる高感度無定位磁力計を作りあげた。さらに53年R.A.フィッシャーは測定値のばらつきの程度の統計的な解析方法を示した。…

【大陸移動説】より

… 大陸移動説に対する有力な証拠は1950年代初めころから古地磁気学によってもたらされた。イギリスのブラケットPatric Maynard Stuart Blackett(1897‐1974)とランコーンS.Keith Runcorn(1922‐95)の両グループは世界各地の各種の岩石の自然残留磁気を測定し,それらが大陸の緯度変化と回転の定量的な証拠であることを示した。インドの北上やイベリア半島の回転などがはっきり示された。…

※「ブラケット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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