翻訳|pocket
衣服,エプロンなどにつける物を入れるための小袋。アングロ・ノルマン語のpokete,中世英語のpoketに由来する名称である。西欧ではポケットが衣服につくまでは,首回りの衿や頭巾,袖などに金などを隠していた。また貴族はオーモニエールaumonièreという絹製の小袋をベルトに吊るし,農民や職人は麻製の袋をベルトに下げて必要な道具を入れていた。16世紀には男子のズボンに袋状の装飾コドピースcodpieceをつけるようになり,物を入れるのに利用された。17世紀には男子服のジュストコルの身ごろにポケットがつき,次いで胴衣のベストにもつけられた。19世紀半ばにはズボンの縫目にポケットがはさまれ,男子服に不可欠のものとなった。女性のポケットとしては,18世紀にスカートの下に袋を二つとりつけたひもを腰に巻き,スカートの脇から手を入れるようにしたものが現れたが,ハンドバッグが必需品となったため,ポケットは普及しなかった。衣服に定着するのは20世紀になってからで,テーラード・スーツにはポケットがつけられた。またデザイナーのG.シャネルは,ポケットは装飾でなく実用であるという考えのもとに,スーツにポケットをつけた。今日では,流行やデザインによって多様な形のポケットが,衣服やエプロン,小物類につけられており,衣服の外側にとりつけるものをアウトサイド・ポケット,切込みを入れて内側につけるものをインサイド・ポケットと呼んでいる。前者にはパッチ(はりつけ)・ポケット,ウェルト(箱)・ポケット,雨蓋のついたフラップ・ポケットなどがある。なお,ポシェットpochetteは細く長めの紐をつけた小型のバッグで,本来は〈小さなポケット〉の意である。
執筆者:池田 孝江
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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