日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポート・サイド」の意味・わかりやすい解説
ポート・サイド
ぽーとさいど
Port Said
エジプト北東部、スエズ運河の地中海側入口にある港湾・工業都市。ポート・サイド県の県都。アラビア語ではブール・サイドBu Sa'idという。人口47万2335(1996)。地中海とマンザラ湖に挟まれた帯状の砂州の上、運河の西岸にある寄港地で、米、綿花、塩の積出し港である。工業は石油精製、化学、電機、繊維などが立地する。運河沿い鉄道の起点で、カイロとは鉄道のほか空路でも結ばれる。1859年にスエズ運河の建設基地として創設され、当時のエジプト総督サイード・パシャにちなんで命名された。運河完成後は、国際的港湾都市、スエズ運河会社の所在地として発展し、造船などの工業もおこり、カイロ、アレクサンドリアに次ぐ都市に成長した。しかし1956年7月大統領ナセルがスエズ運河の国有化を宣言したため、同年10月末スエズ戦争が起こり、市はイギリス、フランス両軍に攻撃され、運河も5か月閉鎖された。また67年6月、第三次中東戦争でのイスラエル軍の攻撃で戦災を受け、運河も再度閉鎖された。運河東岸がイスラエル占領地となり市の復興の見通しもたたなかったが、74年イスラエル軍が撤退、75年運河も再開して市の再建が始まった。現在はもとの活気を取り戻し、人口も増加している。市街地は碁盤目状の街路をもち、ヨーロッパ風の建物が並んでいる。運河の東岸には付属港のポート・フワドがあり、ここも工業地となっている。
[藤井宏志]