マクワウリ(読み)まくわうり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マクワウリ」の意味・わかりやすい解説

マクワウリ
まくわうり / 真桑瓜
甜瓜
[学] Cucumis melo L. var. makuwa Makino

ウリ科(APG分類:ウリ科)の一年草。インド原産で、メロンの変種。メロンの祖先種が紀元前に中国に入り、東洋で栽培されて今日に至った系統がマクワウリだとされる。日本にはかなり古く伝来し、『万葉集』にも「宇利(うり)」の名で詠まれている。古くから岐阜県本巣(もとす)郡真桑(まくわ)村(現、本巣市)が名産地だったので、真桑瓜の名が一般的になったといわれる。北海道や東北地方ではアジウリとよぶことも多い。茎は地上をはい、枝分かれして、巻きひげで他物に絡みつく。葉は掌状に浅く裂ける。花は葉腋(ようえき)につき、黄色で同属のキュウリより小さい。普通は雌雄異花であるが、両性花もかなりある。果実はやや長い球形で、長さ5~10センチメートル、熟すと黄、緑白、白色になる。また果肉の色も白、淡黄色など品種によって異なる。いずれも果実に香りがあり、果肉は多汁質で甘い。

 マクワウリの在来品種には、果実が黄金色で俵形のもの(金甜瓜(きんまくわ)、黄金(おうごん)9号など)、緑白色で長円形のもの(銀甜瓜)、白色で球形のもの(ニューメロン)などがある。しかし現在は、マクワウリとメロンを交配した一代雑種(F1)が多くつくられており、これらの品種は、「プリンスメロン」をはじめ、「メロン」の名がつけられて市場に出回っている。マクワウリはメロンに比べると香気が少なく、果肉も薄いが、多湿条件や低温に強いので、これらの一代雑種は両方の優れた性質をもっている。

 栽培はビニル被覆による露地栽培により、春に苗床で苗を仕立て、ビニルトンネル内に定植し、成長につれビニル被覆を除く。

[星川清親 2020年2月17日]

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改訂新版 世界大百科事典 「マクワウリ」の意味・わかりやすい解説

マクワウリ (真桑瓜)
oriental melon
Chinese melon
Cucumis melo L.var.makuwa Makino

初夏の果物として親しまれてきたウリ科の一年草。岐阜県本巣郡真桑村(現,本巣市)が良品の産地であったので,地名にちなんで名付けられた。古くは〈甜瓜〉と書き,カラウリ,アジウリ(味瓜)とも呼ばれた。アフリカ原産のメロン類が,インドを経て紀元前に中国に伝わり分化したもので,華北を中心として発達し,5世紀ころにはすでに多くの品種が育成されたといわれる。日本への渡来は明らかでないが,応神天皇のころ朝鮮からの使者や帰化人によって伝えられたともいわれている。また,〈ほぞち〉とも呼ばれ,〈熟瓜〉の字をあてた。ほぞちは〈臍落〉の意で,熟して自然にへたより落ちたものは美味で,熟してから食べることを意味する。茎は有毛のつる性でよく分枝し,浅く5裂した葉を互生する。普通親づる,子づるには雄花が着生し,孫づるの1節目から2節目に果実となる両性花がつく。果実は丸,楕円,円筒形など品種により異なる。果皮の色は熟すると白,黄,黄緑,緑などを呈し,果肉は白,帯黄白,淡緑色である。品種は,古くは金まくわ,銀まくわが主体で,明治の初めナシウリ(梨瓜)が中国から導入され,関西を中心に広く栽培された。1904年から05年にナツメウリ(棗瓜)が華北から導入され,改良淘汰されて多くの地方品種が育成された。さらに交雑育種によって,奈良1号,黄金9号など黄金系品種が育成され,他の品種にかわって広く普及した。しかし最近は露地メロンに押されてその栽培は激減している。栽培は4月ころに種子を直接畑にまくか,移植によって栽培する。低温に弱いので初期には保温することも多い。分枝数によって収量が左右されるので入念に摘心,整枝を行い,7月中旬~8月中旬に収獲する。成熟果は甘み(主にブドウ糖)と,香気(セバシン酸エチル)があり,生食に適する。未熟果は苦みがあり催吐剤として用いる。
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百科事典マイペディア 「マクワウリ」の意味・わかりやすい解説

マクワウリ

カラウリ,アジウリとも。インド〜中央アジア原産といわれるウリ科の一年草。高温乾燥を好み,栽培は容易,日本でも古くから栽培されていた。茎はつる性で巻きひげがあり,葉は互生しハート形で浅い切れ込みがある。花はふつう雌雄異花で黄色。雄花は花柄上に2〜5集合して着き,雌花は孫づるの1〜2節目に着生。液果は球形または長円形で表皮は平滑。夏,淡緑色,黄緑色,白色などに熟す。果実を生食。露地メロンにおされて栽培は激減。
→関連項目ウリ(瓜)シロウリメロン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マクワウリ」の意味・わかりやすい解説

マクワウリ(真桑瓜)
マクワウリ
Cucumis melo var. makuwa

ウリ科のつる性の一年草で,メロンやシロウリと同一種とされる。インド原産といわれ,栽培の歴史は古い。つるは長く地上をはい,掌状に3~7裂した葉を互生する。雌雄同株で夏,黄色の雄花と雌花を開く。花冠は5裂し,直径約 2cmである。果実は円柱状楕円体で長さ 10~15cm,直径約5~10cmとなり,果皮は黄緑色で縦に淡い色の縞がある。果肉は多汁で軟らかく,一種の香気があり甘いので果物として生食する。昔,岐阜県の真桑村で本種の良品種を産したのでこの名がある。果実の表面が黄金色の金マクワ,緑色の地に緑白の縞のある銀マクワ,果実が球形に近いプリンスメロンなどの品種がある。

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「マクワウリ」の解説

まくわうり[果菜類]

東海地方、岐阜県の地域ブランド。
主に本巣市で生産されている。真桑村(現・本巣市真正地区)の原産。1575(天正3)年には、織田信長が朝廷や将軍・足利義昭に献上したことで知られる。昭和20年代からは、スイカやメロンの人気におされ姿を消していった。1990(平成2)年、原種保存と真桑特産品の復活のために真桑ウリ栽培研究会が設立され、栽培を維持する活動がおこなわれている。果実は米俵のような円柱形、黄色に緑の縞模様がある。成熟すると蔓から自然に離れ落ちる落ち瓜で、香りが高く甘酸っぱい。飛騨・美濃伝統野菜。

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報

栄養・生化学辞典 「マクワウリ」の解説

マクワウリ

 [Cucumis melo var. makuwa].スミレ目ウリ科キュウリ属の一年草.果実を食用にする.

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世界大百科事典(旧版)内のマクワウリの言及

【ウリ(瓜)】より

…ウリは広義にはウリ科に属する栽培植物(ウリ類)やその果実の総称であるが,狭義にはマクワウリ(イラスト),メロン(イラスト),シロウリキュウリ(イラスト)などを含むキュウリ属の果実を指す。ウリ類の果実は,多肉・多汁な果肉を有するものが多いので,食用としての利用価値が高い。…

※「マクワウリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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