一代雑種(読み)いちだいざっしゅ(英語表記)first filial generation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ある生物系統内で遺伝子の組合せが F1 のように同質に固定してしまったものを純系という。2つの異なる純系の雌雄を掛合せると,子世代 ( F1 ) は,AA bb CC DD … × AA BB cc dd → AA Bb Cc Dd … のように,非常に多くの形質についてヘテロとなり,優性形質についてこれまでになかった新しい組合せ (A B C D … ) が得られる。優性形質にはその生物の生存上で有利なものが多いので,F1両親よりも生活力がすぐれていることも多い。この現象雑種強勢 (ヘテローシス) といい,この効果を最高に活用するための交雑が一代雑種である。家畜,農業用生物について利用例が多く,牝馬と牡ロバ交配によるらばが有名。蚕でも早くから採用され,現在農家で飼育されているのはすべて一代雑種であり,近年はトウモロコシでも急速に普及している。種無すいかは雑種強勢を活用したものではないが,一代雑種利用の一種である。一代雑種のなかには原種の組合せばかりでなく,交雑原種を用いた三元および四元雑種があり,今後はこれらが多く利用される趨勢にある。原系統 (純系) の両親を保存し続ける煩雑さがあるが,この点も方法上の改良がいろいろ工夫されている。

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世界大百科事典 第2版の解説

生物で遺伝質の違う2個体の交配(かけ合せ)によってできる第1代目を雑種第1代first filial generationといい,記号をF1で示すが,一代雑種はこのF1の特別ないい方である。農業上利用価値が高いのでこのいい方が用いられている。雑種が両親よりも旺盛な生育を示す現象を雑種強勢というが,この雑種強勢は両親がかなり遠縁のとき効果が高い。また純系に近い生物間の交配でも雑種強勢が強くでる。単交配(1回だけの交配)ではF1での効果がきわだって高いので,農業面で一代雑種という採種法がよくとられている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

純系またはそれに近い両親の間の交雑の第一代目(F1)からなる系統、またはそれを利用した品種をいう。雑種第一代目に著しく現れる雑種強勢を利用したり、両親の長所を組み合わせたりすることで、優れた性質を得ることができると同時に、個体どうしがよくそろった品種を得ることができる。しかし、このような利点は一代限りで、それからの第二代目以降には、たいてい雑種強勢が失われたり、遺伝的分離がおきて特性が不ぞろいになったりする。一代雑種をつくるためには、選ばれた両親系統の間で、かならず交雑を行わなければならないので、交雑の容易な繁殖構造をもつトウモロコシやニワトリなどの他殖性(他家受精)生物で広く実用化されたが、イネや飼料作物のモロコシ(ソルガム)などの交雑の困難な自殖性(自家受精)作物でも、自殖を妨げ交雑を容易に行わせる遺伝的性質を付与して、一代雑種の品種がつくられている。これらはF1品種ともよばれ、学術的には「1」を下部に小さく添える形で記述するが、一般には「F1品種」と表記されることも多い。[井山審也]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 遺伝的組成の異なる二個体の交配によって生じる個体で、有性生殖能力がないもの。

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