改訂新版 世界大百科事典 「マグレモーゼ文化」の意味・わかりやすい解説
マグレモーゼ文化 (マグレモーゼぶんか)
デンマーク,ゼーランド島のマグレモーゼMaglemose遺跡にもとづく北ヨーロッパの中石器文化。完新(沖積)世の初期(炭素14法による年代で前8000-前5600年)に属し,当時陸続きだったグレート・ブリテン島,スカンジナビア半島,デンマークから北西ロシアにわたる。湖沼や川に接する低地に簡単な構造の家を建てて住み,季節によって移動した。イギリスのスター・カー遺跡は冬の住いの代表例。堅果類を採集し,各種のシカやイノシシ,毛皮用のビーバー,テン,キツネなどや水鳥を弓矢で捕り,また片側に逆刺(かえし)を連ねた角製簎(やす)や釣針,網,筌(うえ)/(うけ)などの漁具を使ってカワマスなどの魚を捕った。当時の海岸線は現在では海底下となり,海岸遺跡はあまり知られてないが,各所に貝塚を残している。また革ボートで海に出,タラを捕ったとみられる。
石器には彫刻刀,円形搔器,各種の細石器,伐採・加工兼用の打製石斧があり,骨角器も発達する。土器はもたず,カバ(樺)の樹皮製容器をもつ。骨角器や動物の形に加工したコハクに,幾何学文や人・動物像を線刻している。なお石鏃には,基端が斜辺をなす二等辺三角形のものと逆台形のものがあり,また獲物の皮を傷めないよう先を平らに加工した木の矢も使っている。
執筆者:佐原 眞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報