マニトバ(読み)まにとば(英語表記)Manitoba

翻訳|Manitoba

精選版 日本国語大辞典 「マニトバ」の意味・読み・例文・類語

マニトバ

(Manitoba) カナダ中央部の州。州都ウィニペグ。平原地帯にあり、湖沼が多い。春小麦の大産地。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「マニトバ」の意味・わかりやすい解説

マニトバ[州]
Manitoba

カナダ中央部に位置する州。面積65万0087km2,人口118万(2005)。州都ウィニペグ。おもな人口構成はイギリス系43%,ウクライナ系12%,ドイツ系12%,フランス系9%。州名の由来はアルゴンキン・インディアンの語で〈霊魂の出す音をもつ海峡〉を意味するマニトバ湖からきている。南西部を除き州の大半カナダ楯状地に属するので湖沼が非常に多く,生産高からみれば少ないものの漁業は州にとって重要な生業である。同じ要因から近年は観光業も盛んで,年間300万人の観光客が訪れている。生産高からみる州第1の産業は製造工業で4割強を占め,ついで建設業,農業が各2割,水力発電鉱業となっている。工業は食品加工が圧倒的であるが,農機具や輸送機器の製造など機械部門も少なからぬ比率を占めている。農業は7割近くが伝統ある〈マニトバNo.1春小麦〉の生産と畜産である。鉱業では州第3の都市トンプソンに世界最大のニッケル製造工場集団がある。

 ルパーツ・ランドの一部とされたこの地方へのヨーロッパ人進出の歴史は古く,1812年にはハドソン湾から南下したスコットランド人たちがレッド・リバー植民地を建設した。ここはハドソン湾会社駐屯地糧食を提供する半農半猟の植民地として発展したが,主要な住民はメティスで,イギリス領北アメリカの中では特色ある植民地であった。レッド・リバー反乱を経て1870年5月,第5番目の州としてカナダ自治領に参加した際は,マニトバ法でメティスのもつフランス系文化(言語,宗教)が保護された。しかし,その後東のオンタリオ州からの農民移住が増加してからは,州のイギリス系住民の影響力によりこの保護は取り消された。ただし,フランス語権拡大の要求は現在に至るまで繰り返されている。1885年のカナダ・パシフィック鉄道開通によって州都ウィニペグは急速に成長をとげた。アジア系を除くあらゆる国からの移民の通過地となった同市はその国際性で知られており,マニトバ州がカナダの国是の多文化主義を最もよく実現しているといわれるゆえんである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マニトバ」の意味・わかりやすい解説

マニトバ
まにとば
Manitoba

カナダ中央部の州、平原三州の一つ。面積55万1937.87平方キロメートル、人口111万9583(2001)。州都ウィニペグ。オンタリオ州とサスカチェワン州に挟まれ、プレーリーの東端を占める。土地は大部分低平で、ウィニペグ湖、シーダー湖、マニトバ湖など大小数多くの氷河湖がある。主要河川はネルソン川、チャーチル川、シール川などで、すべてハドソン湾に注ぐ。気候は大陸性であり、平均気温は1月で零下20~零下30℃、7月で20~23℃、年降水量は500ミリメートル前後である。北東部のハドソン湾に臨む地域は基盤岩が露出した不毛の地だが、中南部のレッド川流域、ウィニペグ湖とウィニペゴシス湖の南縁地域は湖成層に覆われた農業地帯である。とくにカナダ・プレーリーの春小麦地帯の中心地で、ここでとれる小麦は良質のパン用小麦として有名である。近年、小麦以外の穀物、テンサイ、野菜、酪農などが取り入れられ、多様化の傾向にある。南西部は石油が注目されているほか、金、銀、鉄などの鉱物資源も豊富だが、大部分は未開発である。中央部にはウィニペグ湖などの大きな湖が南北に延びているため、大陸横断鉄道は州南部に集中し、その要衝地であるウィニペグは西部諸州への門戸であり、小麦の世界的集散都市として知られる。

 17世紀にハドソン湾が探検され、18世紀末にフランス人が南部を探検した。現在の人口構成はイギリス系が多く、ついでウクライナ系、ドイツ系が目だつ。1878~86年の大陸横断鉄道の開通で急速に発展し、カナダ第一の農業州となる。マニトバとはインディアンのことばで「プレーリーの湖」という意味である。1870年に五番目の州としてカナダ連邦に加入した。

[山下脩二]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のマニトバの言及

【カナダ】より

…一方イギリス系は,フランス系と異なってイギリス諸島,アメリカ合衆国から間断なく移民を迎えている。全人口比は45%で,カナダ全土に遍在するが,ニューファンドランド州,プリンス・エドワード・アイランド州,ノバ・スコシア州のように人口の大半がイギリス系であるという州は東部に多く,西部のマニトバ,サスカチェワン,アルバータの諸州ではイギリス系は州人口の半分以下しか占めていない(図)。 イギリス系,フランス系に次いで人口の多い民族はドイツ系,イタリア系,ウクライナ系である。…

【マニトバ法】より

…1870年5月のマニトバ州のカナダ自治領参加を制定した法。その原型は1870年1月25日付でレッド・リバー植民地臨時政府がカナダ政府に陳情したメティスの〈権利宣言〉である。…

【リエル】より

…1869年レッド・リバー植民地がハドソン湾会社からカナダ政府へ委譲された際,メティスを中心とする住民は既得権擁護を求めて臨時政府を樹立し,リエルはその長に推されてカナダ政府と交渉を開始した。彼らの要求は全面的に容認されて,70年にマニトバ州が設立されるが,この間彼らを襲った暴徒の一人を処刑したために反徒の烙印を押され逃亡。その後カナダ下院に選出されるが追放され,アメリカ合衆国のモンタナ州に住んだ。…

【レッド・リバー反乱】より

…彼らはL.リエルを首班として臨時政府を樹立し,連邦政府へ既得権擁護を求め,連邦政府任命の副総督の就任を阻止した。彼らの要求はマニトバ法として具体化され,70年5月,レッド・リバー植民地はマニトバ州として連邦に加入したが,この間実力でメティスを追うべく侵入したオンタリオ人トマス・スコットを臨時政府が捕らえて処刑したため,リエルとその一党は反徒とされ,彼らの希望が受理されたにもかかわらず,反乱の指導者たちは州の成立を目前にレッド・リバー植民地を去った。【大原 祐子】。…

※「マニトバ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android