カナダにおいて混血の人々,とくにフランス人とクリー族,オジブワ族インディアンとの間に生まれた人々を称する語。フランス語を話し,カトリックを奉じ,バイソン狩りを生業とした。スコットランド人とインディアンの混血を含める場合もあるが,かれらは農業を生業とする者が多かった。カナダ史においてメティスは毛皮交易の重要な担い手として登場するが,1816年にはハドソン湾会社系のレッド・リバー植民地を攻撃した兵力として,北西会社に使われた。西部カナダにおける開拓の進展とともにメティスはより西方へ追われ,69年から70年にかけてレッド・リバーで,84年から85年にかけて当時のノースウェスト・テリトリーズのサスカチェワン地方で,自分たちの権利擁護を求めてカナダ政府に交渉し,後者では武力衝突を生じている。有名なメティスにはL.リエル,リエルの盟友G.デュモン,のちにマニトバ州首相となったスコットランド系のJ.ノルケーがいる。インディアンとヨーロッパ系の混血の人々が一つの社会階層を形成したのは,アメリカ合衆国とは異なるカナダ社会の特徴である。
→レッド・リバー反乱
執筆者:大原 祐子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ギリシア神話の女神で「知恵」の意味。オケアノスとテティスの娘でゼウスの最初の妻。ゼウスは、さまざまに姿を変えて逃れようとするメティスをつかまえて妻としたが、ウラノスとガイアから、彼女は男勝りの女児を生んだのち父をしのぐ男児を生むであろうと預言されたため、彼女を腹の中に飲み込んでしまう。月満ちてプロメテウスがゼウスの頭を斧(おの)で打つと、そこから完全武装をしたアテネが躍り出たが、メティスはゼウスの腹の中にとどまり、彼の知恵となった。
[中務哲郎]
…彼女はもともとギリシア先住民族の女神で,ミュケナイ時代には王侯の宮殿が立つアクロポリスの守護神であったが,やがて政体の変化とともにポリスそのものの守護神,さらにはポリスの存続・発展に不可欠のさまざまの技術や学芸の女神となったものと考えられる。神話では,ゼウスとその最初の妻メティスMētis(思慮の女神)の娘とされ,メティスから生まれる男子は父の王座を奪うだろうとの予言におびえて妊娠中の妻をのみ込んだゼウスの額から,すでに成人し,武装した姿で飛び出したという。彼女の崇拝の中心地であったアテナイとの関係については,かつて彼女と海神ポセイドンがこの町の領有を争ったおり,海神が三叉の矛を一撃してアクロポリス上に馬(一説では塩水の泉)を出現させたのに対して,彼女はオリーブの木を生じさせた。…
…
[神界秩序の確立]
天界の新支配者ゼウスは多数の女神との間に次の世代の神々をもうけ,各自に権能を定める。まず思慮の女神メティスMētisを妻とした。女神がアテナを出産しようとしていたおり,メティスがゼウスにとって代わる有力な神を産む運命にあることを知ったゼウスは,彼女を自分の腹に収めてしまい,アテナを自分の額から生み出した。…
…〈海から海へ〉またがる国家,というのが建国のモットーとして採用されたが,そのためにはオンタリオ州とブリティッシュ・コロンビア植民地の間のハドソン湾会社領有地を獲得しなくてはならない。その譲渡に関する交渉は問題なく進行していったが,事の成行きを知らされなかったレッド・リバー地域の住人,メティスは自分たちの既得権を守ろうと1869年臨時政府を樹立した。L.リエルを首班として連邦政府と交渉し,メティスの主張が大幅に受け入れられて70年マニトバ州が成立する。…
… ルパーツ・ランドの一部とされたこの地方へのヨーロッパ人進出の歴史は古く,1812年にはハドソン湾から南下したスコットランド人たちがレッド・リバー植民地を建設した。ここはハドソン湾会社の駐屯地に糧食を提供する半農半猟の植民地として発展したが,主要な住民はメティスで,イギリス領北アメリカの中では特色ある植民地であった。レッド・リバー反乱を経て1870年5月,第5番目の州としてカナダ自治領に参加した際は,マニトバ法でメティスのもつフランス系文化(言語,宗教)が保護された。…
…1870年5月のマニトバ州のカナダ自治領参加を制定した法。その原型は1870年1月25日付でレッド・リバー植民地臨時政府がカナダ政府に陳情したメティスの〈権利宣言〉である。これには公務における英仏両語の使用や財政的援助のほか,〈この地域の住民が享受したすべての財産,権利,特権〉の擁護がうたわれたが,これにカトリック教育を認める公立学校(分離学校)制度を加えたものが,マニトバ法となった。…
…1869年から70年にかけて,カナダの現ウィニペグ付近で起こったメティスによる反乱。1867年のカナダ自治領政府の成立にともない,ハドソン湾会社が約200年間にわたって領有してきたルパーツ・ランドのカナダへの委譲交渉が開始され,69年12月1日を期して譲渡が成立することになった。…
※「メティス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新