メティス(読み)めてぃす(英語表記)Metis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メティス」の意味・わかりやすい解説

メティス
Métis

フランス語で「混血」の意。カナダにおいて先住民とヨーロッパ系の人々の子孫をいう。 19世紀後半のカナダ史において,彼らの存在がクローズアップされた。すなわち,1869年マニトバ州がカナダの一州として連邦に加わる際,ウィニペグを中心とするレッドリバー植民地メティスは,自分たちの権利を主張して,L.リエルを指導者に反乱を起した。彼らは主としてスコットランド人と先住民,フランス人と先住民の混血であり,半農半狩猟民族で自分たちと価値観を異にする農業植民地の拡大を恐れた。また指導者リエルに代表されるように,フランス系のメティスはカトリックを捨てまいとしていた。リエルは 85年サスカチュワンで再び反乱の指導者にかつぎ出されたが,このときの参加者はメティスより先住民が多かったとされる。少数民族の意識の高いカナダでは,現在も自分たちをメティスと規定する人々は少くない。

メティス
Mētis

ギリシア神話知恵女神オケアノスの娘 (→オケアニデス ) の一人で,クロノスが腹の中に飲み込んだ兄弟姉妹を吐き出させる薬を与えるなどして,ゼウスの勝利に貢献し,神々の王の最初の妻になった。しかしクロノスとガイアから,もしこの結婚を続ければメティスの産む息子によって王位を奪われると教えられたゼウスは,すでに彼の種により女児を妊娠していたメティスを飲み込み,そのあとこの胎児がゼウスの頭のてっぺんから出生したのが,知恵の女神の資質を母から受継いだアテナで,メティスは以後ゼウスの腹中にいて彼に助言を与え,その世界統治に不可欠の役割を演じ続けているという。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「メティス」の意味・わかりやすい解説

メティス
めてぃす
Metis

ギリシア神話の女神で「知恵」の意味。オケアノスとテティスの娘でゼウスの最初の妻。ゼウスは、さまざまに姿を変えて逃れようとするメティスをつかまえて妻としたが、ウラノスとガイアから、彼女は男勝りの女児を生んだのち父をしのぐ男児を生むであろうと預言されたため、彼女を腹の中に飲み込んでしまう。月満ちてプロメテウスがゼウスの頭を斧(おの)で打つと、そこから完全武装をしたアテネが躍り出たが、メティスはゼウスの腹の中にとどまり、彼の知恵となった。

[中務哲郎]

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