節足動物のうちの昆虫類,クモ類および多足類にのみみられる特殊な排出器官。陸上にすむ昆虫の排出は他の多くの無脊椎動物のように腎管によってではなく,腸管とマルピーギ管によってなされる。これは昆虫が気管で呼吸を行うために血管系の発達が悪く,代謝産物をろ過して排出するのに必要な血リンパ圧も十分に得られないことに関連していると思われる。マルピーギ管は中腸と後腸の境に開口し,種により異なるが2本から数十本,多いものでは数百本の毛細管からなり,おのおのの細管は細胞構造の相違から上管と下管に分かれ,腸に開口する細管基部ではややふくらんでいる。腎管が中胚葉由来であるのに対し,マルピーギ管は内胚葉性の器官である。クモ類は腎管由来の脚基腺のほかマルピーギ管もあり,起源の異なる二つの排出器官を持つ。
マルピーギ管の細管腔中にはカリウムが分泌され,内部の液のカリウム濃度は昆虫の血リンパ中の10倍にも達するため,細管内の水が浸透することになり,この水が直腸で再吸収される。血リンパに含まれる尿酸カリウムは水とともに上管内に入り,炭酸と反応して尿酸を放ち炭酸水素カリウムとなる。これは下管より血リンパにもどり,再び尿酸と反応して尿酸カリウムとなり上管内に入る。この機構をくり返すことによって尿酸の排出を行っている。
執筆者:小川 瑞穂
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昆虫をはじめクモ、ヤスデなど陸生の節足動物にみられる排出器官。イタリアの解剖学者マルピーギにちなんだ名称である。マルピーギ管は1本から数十本までの細長い管よりなり(管の数は種によって異なる)、後腸部に開口する一対の排出口につながっている。昆虫の排出について、管の前半部では体内のアンモニアを尿酸のカリウム塩のかたちで、水、炭酸イオン、カリウムイオンなどとともに排出し、その後半部で水、カリウムイオンを再吸収し、おもに結晶化した尿酸のみを後腸部へ排出することが知られている。
[竹内重夫]
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…触角腺は体腔囊・迷路・腎導管・膀胱からなり,淡水産の種では腎導管が長く,体液の浸透圧調節に関与して,体液より薄い尿を排出できる。クモ類は脚基腺が腎管由来の排出器官であるが,マルピーギ管をももつ。昆虫類には腎管由来の排出器官はなく,マルピーギ管が排出機能を営む。…
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