トチノキ科の落葉高木で,花は白くやや赤みをおびる。ギリシアからトルコにかけて分布し,欧米では街路樹として広く植えられる。パリのそれはとくに名高い。日本でもトチノキに交じってまれに植えられる。別名セイヨウトチノキ,ウマグリ(英名の直訳)。トチノキよりも小葉がやや小さく,裏面は無毛で,縁に鋭い重鋸歯があり,果実の突起はとげ状になる。花が紅色のベニバナトチノキA.carnea Hayneは,マロニエと北アメリカ原産で花が鮮紅色のアカバナアメリカトチノキA.pavia L.(英名buckeye)との雑種であり,これもときに植えられる。
執筆者:濱谷 稔夫
マロニエの実を糸に通して互いにぶつけ合い,相手の実を割る遊びは,イギリスで〈トチの実遊びconker〉と呼ばれ親しまれている。これはもとカタツムリの殻を使った遊びで,conkerの名もconch(巻貝)とconquer(勝つ)の語呂合せから生じたらしい。この木には虫よけの効果があるとされ,川や森へ出かけるとき葉を帽子にさす人もいる。なおマロニエという名称はマロン(クリ)に由来し,マロングラッセも古くはマロニエの実が使われたという。また,英名ホース・チェスナット(ウマグリ)は大型で野卑なクリの意。名称にウマが冠せられる理由は,実が家畜の飼料とされたり,ウマの咳を治す薬に用いられたことによるらしい。花言葉は〈ぜいたくと健康〉。
執筆者:荒俣 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
トチノキ科(APG分類:ムクロジ科)の落葉高木。バルカン半島原産であるが、現在は世界中で植栽されている。高さは約25メートル。日本のトチノキに似ているが、果実の表面に刺(とげ)があるので区別され、セイヨウトチノキともよばれる。葉は大形の掌状葉で対生する。5月ころ、枝先に円錐(えんすい)花序をつけ、トチノキより大形で白地に赤みを帯びた花を多数開く。花を観賞する街路樹としてよく用いられパリの並木はとくに有名である。品種としては重弁花、斑(ふ)入り葉、切れ込み葉、ピラミッド樹形、枝垂(しだれ)樹形などがある。ベニバナトチノキA. × carnea Hayneは、マロニエと北アメリカ産のアカバナアメリカトチノキA. pavia L.の雑種で、1820年にみいだされた。
[伊藤浩司 2020年9月17日]
種小名や英名にみられるウマグリの名は、ヨーロッパに導入される以前ペルシアで、息切れしたウマの薬として使っていたから、あるいは若い枝の葉痕(ようこん)が馬蹄(ばてい)形であるからといわれる。異説もあるが、1576年にウィーンに種子がもたらされ、ヨーロッパに広がったものである。
[湯浅浩史 2020年9月17日]
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「トチノキ(栃の木)」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…【飯島 吉晴】。。…
… トチノキ属Aesculusは約25種からなるトチノキ科のうちの大部分を占め,北半球の温帯に広く分布する。マロニエA.hippocastanum L.(英名horse chestnut)は南ヨーロッパ原産の高木で,広く街路樹として植えられる。中国産シナトチノキA.chinensis Bunge(漢名七葉樹)は小葉に柄がある。…
… トチノキ属Aesculusは約25種からなるトチノキ科のうちの大部分を占め,北半球の温帯に広く分布する。マロニエA.hippocastanum L.(英名horse chestnut)は南ヨーロッパ原産の高木で,広く街路樹として植えられる。中国産シナトチノキA.chinensis Bunge(漢名七葉樹)は小葉に柄がある。…
※「マロニエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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