翻訳|mantel
暖炉の焚(た)き口の上部、周辺に設けられる装飾をいう。西洋の暖炉は、日本の床の間のような精神的意味をもつ室内装飾の中心であるため、各時代に応じた様式でデザインされた。初期の暖炉は煙突が壁面から突き出していたので炉と煙突の両者が装飾され、頂部に破風(はふ)を設けて重厚にデザインされた。装飾はおもに大理石や石造のレリーフ、柱型が用いられた。煙突が壁内部に設置されるようになると、上部は壁の一部としてデザインされ、鏡、絵画などが装飾として用いられるようになった。さらにのちには、時計、ろうそく台などの調度品が装飾として利用されるようになり、それらを置く飾り棚が設けられ、いわゆる壁付き暖炉の形式が完成する。したがって現在では、この飾り棚を含む焚き口周辺部をマントルピースとよんでいる。
[吉田治典]
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…屋根の上に煙突がつき出されたのは,炉の上の〈おおいもの〉が屋上に延長した結果であるが,それが数世紀間も屋上に伸びなかったのは,戸外の風が強いと,煙突から逆風がはいって炉の煙を室内にはき出すためで,その防止法は長い間人々の頭を悩ました。しかし15~16世紀に室内では炉の〈おおいもの〉がマントルピースに近いものにかわり,屋上では煙突が建築物の一部として装飾されるようになり,とくにイタリアのベネチアでは,建築上の理由からでなく美学上の理由から,さまざまの煙突(とくにその先端の装飾や形)がみられるようになった。それらはいずれも,煙を煙突の先端からでなく横から出す旧式の構造であった。…
…したがって壁炉は室内の〈位〉を決定するものとして,時代時代の好みにしたがって意匠がこらされた。またそのマントルピースは装飾品や記念品を置く好適の棚となった。イスラム世界の住宅では,室内の壁面を華麗なタイルで化粧することが愛好された。…
…この時代には,煙を煙道に導くための覆いは木造であり,そこにプラスターあるいは土を塗って耐火性をもたせていた。この部分は後に煉瓦積みとなり,覆いの部分全体が壁体の中に隠され,室内側には炉口を囲って装飾的に暖炉を構成するマントルピースが設けられるようになる。炉室fireboxの上部はただちに煙道につながるのではなく,すぼみが設けられる。…
※「マントルピース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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