改訂新版 世界大百科事典 「ミサゴ」の意味・わかりやすい解説
ミサゴ (鶚)
osprey
Pandion haliaetus
タカ目タカ科の鳥。タカ科の中の変りものでもっぱら魚類を主食とする。解剖学的特徴が他のタカ類と違っているため,ミサゴ科として1属1種の独立の科とする学者もいる。全長は雄が約55cm,雌は約64cm。トビよりやや小型だが,翼がより長く,頭部と下面が白っぽいので,飛翔(ひしよう)中はトビより大きく見える。背面は暗褐色で,眼の後ろから後頸(こうけい)にかけても褐色である。また,胸に淡褐色の帯がある。魚をつかむための適応として,足裏のうろこはとげ状となり,外指(第4指)はとくに長く,前にも後にも向けることができる。
海岸や大きな湖沼の近くにすみ,波の静かな水面の上をゆったりと飛びながら魚を求める。獲物を見つけると,ホバリング(停空飛行)して狙いを定め,急降下して,足でつかみとる。体長25~40cm,およそ300gくらいの重さの魚をとることが多いが,ときには1kgをこえる大物もとる。巣は水辺の高い木の上や近づきがたい岩棚の上に,小枝や枯草でつくり,4~5月に1腹2~3個の卵を産む。北半球全域とオーストラリア沿岸部で繁殖し,アフリカや南アメリカには冬鳥として渡来する。日本でも全国で繁殖するが多くない。DDTなどの塩素系有機農薬によって卵殻が薄くなり,途中でこわれるなどして繁殖が妨げられ,急激に数が減少している。
執筆者:竹下 信雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報