ミシマサイコ(その他表記)Bupleurum falcatum L.var.komarowi Koso-Polj.

改訂新版 世界大百科事典 「ミシマサイコ」の意味・わかりやすい解説

ミシマサイコ
Bupleurum falcatum L.var.komarowi Koso-Polj.

日当りのよい丘陵の草地に生えるセリ科多年草。根はやや太く,黄色。茎は直立し,細くてやや硬く,上部で分枝し,高さ40~70cm。葉は広線形平行脈があり,セリ科のなかでは特異な形をしており,幅5~15mm。花は黄色で小さく,8~10月ころ上部の枝先の小型の複散形花序につく。果実は楕円形で長さ約3mm。薬用植物として昔,静岡県の三島あたりから多く出荷されたので,この名がついた。今日でも野生品が採集されるが,だんだん少なくなり,各地で栽培されるようになった。根を柴胡さいこ)とよび,解熱鎮痛解毒薬として用い,重要な薬用植物の一つである。本州,四国,九州,朝鮮に分布する。var.falcatum(英名hare's ear)はアジア大陸からヨーロッパに分布する。

 中国で柴胡の名で薬用とされるものは,B.chinensis DC.やB.scorzonerifolium Willd.など数種があるといわれる。日本のミシマサイコに似て,全体大型で,葉の基部が茎を抱くホタルサイコB.longiradiatum Turcz.の根も薬用とされる。いずれもサポニンステロイド含み,他の生薬と配合して肝機能障害伝染性肝炎の消炎,解熱,解毒に応用される。精神安定作用があり,ヒステリー,心因性うつ病,マラリアなどに,また筋の張力を高める作用があり,肛門脱胃下垂子宮脱に用いられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミシマサイコ」の意味・わかりやすい解説

ミシマサイコ
みしまさいこ / 三島柴胡
[学] Bupleurum stenophyllum (Nakai) Kitag.
Bupleurum falcatum L.

セリ科(APG分類:セリ科)の多年草。ユーラシア大陸に広く分布し、日本では本州、四国、九州の山地の草地に自生する。葉と果実の形と大きさには変異が多いため、多くの亜種と変種に分けられる。根はやや太くて短い。茎は直立し、高さ40~100センチメートル、細くて堅く、中部以上で分枝し、ジグザグに曲がり、全株無毛である。葉は互生し、線形ないし広線形で堅く、全縁、先も基部もしだいに細くなり、柄はない。根生葉は長い柄をもつ。葉脈は5~7条の平行脈。花は黄色で、8~10月に開き、枝の先に多数の小さい複散形花序をつける。小散形花序は5~10個の花からなり、小総包片は5個。総包片は1~3個。5個の花弁は中央部から内側に曲がり、雄蕊(ゆうずい)は5個で、子房下位。果実は楕円(だえん)形で長さ約3ミリメートル。

 この種類を漢名では柴胡(さいこ)といい、古くは茈胡と書いた。根を漢方では解熱・鎮痛剤として、感冒、肝炎、胆嚢(たんのう)炎、マラリア、肺結核、消化器病などの治療に用いる。処方としては小柴胡湯(しょうさいことう)がもっとも有名で、肺結核、マラリア、中耳炎、胆石症、胃カタル、小児の虚弱体質の改善などに用いられる。かつては、静岡県と神奈川県に産するものが最良品とされ、三島柴胡、鎌倉(かまくら)柴胡とよばれたが、乱獲のため、すでになくなっている。

[長沢元夫 2021年12月14日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミシマサイコ」の意味・わかりやすい解説

ミシマサイコ(三島柴胡)
ミシマサイコ
Bupleurum falcatum var. komarowi; thoroughwax

セリ科の多年草。ユーラシア大陸に広い分布をもつ母種 B. falcatumの変種とされ,本州,四国,九州と朝鮮半島の南部に分布する。日当りのよい山地,丘陵の草原に生える。茎は直立し,高さ 40~70cmで上部は分枝する。葉は硬く平行脈があり,広線形で先はとがる。根出葉は長い柄があり,茎葉は柄がない。8~10月に,黄色い5弁の小さな花を小散形花序に数個ずつつける。根にサポニンその他の植物ステロイドを含み,薬用植物として使われる。生薬としては単にサイコと呼ぶことも多い。

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百科事典マイペディア 「ミシマサイコ」の意味・わかりやすい解説

ミシマサイコ

セリ科の多年草。本州〜九州,朝鮮半島の日当りのよい山野にはえる。高さ50〜60cm。葉は互生し,線形で堅く,平行脈がある。秋,茎頂に複散形花序を出し,黄色の小花を開く。薬用植物で根を乾燥したものを柴胡(さいこ)といい,漢方では解熱・鎮痛・強壮剤とされる。近年,ヨーロッパ中部原産の近縁種が,ブプレウルムの名で切花用に栽培されている。
→関連項目ホタルサイコ

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