改訂新版 世界大百科事典 「ミンククジラ」の意味・わかりやすい解説
ミンククジラ
minke whale
Balaenoptera acutorostrata
コイワシ(小鰮)クジラが古くから用いられた標準和名であるが,英名からミンクあるいはミンキーが導入され,いまではミンククジラの名称が一般的になった。ヒゲクジラ亜目ナガスクジラ科の哺乳類。最大10m,10tに達する小型のヒゲクジラ。背面は青黒色,腹面は白色。腹側から延びて胸びれ後方の体側に広がるアーチ状の淡色域は特徴的。胸びれの白色の帯は北半球産では明りょうであるが,南氷洋産(クロミンクとも呼ぶ)では不明りょう。熱帯域には,それが肩甲骨部にまで広がっている小型の系統もいる。これらは便宜的に1種として扱われているが,再検討の余地がある。背びれは比較的大きく,上あごの輪郭はするどく前方にとがる。うね(畝)は50~70本あり,へそに達しない。ひげ板は230~360枚で厚さ1~2mm,剛毛とも乳白色であるが,外縁部は黒褐色をなすことがある。
妊娠期間は約10ヵ月で1子を出産。子は体長約3mで生まれ,数ヵ月で離乳するらしい。5~10歳,体長7~8mで性的に成熟する。繁殖期は夏(日本海,黄海,東シナ海)あるいは冬(南半球,北太平洋,北大西洋)にあり,雌はほぼ毎年妊娠する。繁殖場は未確認。成長するにつれて夏には高緯度海域に回遊するようになる。1~数頭で生活し,オキアミ,ニシン,イワシなどを食べる。各地で捕鯨業の対象となり,南氷洋には約70万頭が回遊するといわれる。西部北太平洋-オホーツク海系の生息数は2万5000頭と推定されている。日本海-黄海-東シナ海系については推定がない。日本政府は調査目的に年間440頭(南氷洋)と100頭(西部北太平洋)の捕獲を許可している(1997年現在)。
→クジラ
執筆者:粕谷 俊雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報