モスコビウム(読み)もすこびうむ(その他表記)moscovium

デジタル大辞泉 「モスコビウム」の意味・読み・例文・類語

モスコビウム(moscovium)

超アクチノイド元素超ウラン元素の一。2004年、ロシア米国の共同研究チームが、カルシウムアメリシウム原子を衝突させて生成した。ウンウンペンチウム(ununpentium、元素記号Uup)の暫定名で呼ばれていたが、2016年にIUPAC国際純正・応用化学連合)により現名称が正式名とされた。研究チームのうちロシア側の、ドゥブナ合同原子核研究所があるモスクワ州にちなむ。元素記号はMc 原子番号115。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モスコビウム」の意味・わかりやすい解説

モスコビウム
もすこびうむ
moscovium

アクチノイド人工放射性元素の一つ。原子番号115、元素記号Mc。周期表第15族に属する。新元素として認定されるまでの暫定名称はウンウンペンチウムununpentium(暫定元素記号Uup)。2003年にアメリカとロシアの共同研究で行われたカルシウム原子核をアメリシウム原子核に衝突させる実験で115番元素が合成されたとの報告が2004年にあり、2013年にスウェーデンのチームがその再実験に成功した。

 2015年12月、国際純正・応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)は、IUPACと国際純粋・応用物理学連合(IUPAP:International Union of Pure and Applied Physics)の共同作業部会(JWP:Joint Working Party)が115番元素の発見を承認したことを発表し、117番元素とともに元素名提案権をロシアのドゥブナ研究所(ドゥブナ合同原子核研究所)、アメリカのローレンス・リバモア国立研究所、同じくオークリッジ国立研究所の共同研究グループに与えた。2016年6月、116番元素リバモリウム命名の際にも提案された名称のモスコビウムmoscoviumと元素記号Mcがふたたび提案され、同年11月に公認された。この名称はドゥブナ研究所の所在地であるモスクワ州にちなむ。

 質量数287、288、289、290の同位体報告例があり、いずれもきわめて短い半減期でα(アルファ)崩壊してニホニウムになる。

[岩本振武 2016年12月12日]



モスコビウム(データノート)
もすこびうむでーたのーと

モスコビウム
 元素記号  Mc
 原子番号  115
 原子量   (287)(288)(289)(290)※
 融点    ―
 沸点    ―
※括弧内の数値は原子量ではなく、同位体質量数の一例

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モスコビウム」の意味・わかりやすい解説

モスコビウム
moscovium

人工元素の一つ。元素記号 Mc。原子番号 115。2004年ロシアの合同核研究所 JINRとアメリカ合衆国のローレンス・リバモア国立研究所の研究グループが,カルシウム同位体(質量数 48)をアメリシウム同位体(質量数 243)と融合させることで,115番元素が四つ生成されたと発表した。このとき,質量数 287と 288の二つの放射性同位元素が生成され,それらの半減期はそれぞれ 46.6ミリ秒と 19~280ミリ秒であった。なお,これらが崩壊するとき,α粒子(ヘリウム原子核)を放出し,113番元素(→ニホニウム)が生成された。115番元素の化学的特性ビスマスに似ていると考えられる。名称のモスコビウムは,合同核研究所の所在地ドブナがあるモスクワ州にちなんで命名された。

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