改訂新版 世界大百科事典 「モニリア病」の意味・わかりやすい解説
モニリア病 (モニリアびょう)
blossom blight
spur blight
子囊菌Sclerotinia maliによって起こるリンゴの病気。この菌の無性世代の胞子は連なって数珠つなぎになって形成される。無性世代のものの学名はMoniliaといい,monileはラテン語で首飾りの意。胞子の特徴を示す学名で病名もこれに由来する。発生する部位によって花腐(はなぐされ)病,実腐(みぐされ)病,葉腐(はぐされ)病などと呼ばれる。葉腐病が一番早く発生するが,被害が直接的なのは他の二つである。罹病葉柄から花の部分に菌が侵入し,その節に着いた花を枯らす。実腐病は,菌が開花中の柱頭から侵入して子房を侵し,果実が肥大をやめる。罹病果からは外側に黄褐色のやにを分泌することが多い。この果実が地面に落下すると夏ごろから菌核が形成される。菌核は越冬して翌年の伝染源となる。春暖かくなると菌核は発芽してらっぱ状の子囊盤をつくり,多数の子囊胞子を飛散させて新しい葉腐病を起こす。4~5月が最も感染拡大が著しい。病斑部に生じた無性胞子も感染力を有する。リンゴ園の排水をよくし,落葉を清掃すると発生を抑えることができる。積雪地帯で最もおそろしい病害である。
執筆者:寺中 理明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報