モミジカラマツ(英語表記)Trautvetteria japonica Sieb.et Zucc.

改訂新版 世界大百科事典 「モミジカラマツ」の意味・わかりやすい解説

モミジカラマツ
Trautvetteria japonica Sieb.et Zucc.

高山帯亜高山帯の湿った草地,ときには山地渓流に沿った草地などに生えるキンポウゲ科多年草。地中に匍匐(ほふく)枝を出して栄養繁殖をし,ふつう群生する。根出葉は多くは1枚,ときに2,3枚,長い葉柄があり,長さ5~20(30)cmの葉身は基部が心形,掌状に7~9裂し,裂片には欠刻状の鋭い鋸歯がある。茎は高さ30~60cm,上部でわずかに分枝する。上部の茎葉は根生葉に似るが,小型で柄がない。花は散房状に集まり,白色,直径1~1.3mm。萼片は早くに落ち,花弁はなく,多数のおしべが白色で目だつ。めしべも多数あり,果実は瘦果(そうか)の集まり。本州中部以北,北海道,南千島サハリン,ウスリー地方,オホーツク地方に分布し,分布域の南方に生じるものは葉に毛がないが,北方に生えるものは葉の裏に毛があり,オクモミジカラマツvar.borealis Haraという。本属には他に北アメリカ東部と西部に1種ずつ産する(英名false bugbane)が,これら3種を互いにはっきりと区別することは難しく,同種に含める見解もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モミジカラマツ」の意味・わかりやすい解説

モミジカラマツ
もみじからまつ / 紅葉唐松
[学] Trautvetteria caroliniensis (Walt.) Vail var. japonica (Sieb. et Zucc.) T.Shimizu

キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)の1属1種の多年草。茎は高さ30~60センチメートル。葉は単葉で、掌状に中裂する。7~8月、散房花序をつくり、径約1センチメートルの淡黄色花を開く。萼片(がくへん)は3~5枚、開花するとじきに落ちる。亜高山帯から高山帯の湿った草原や林縁、ときに渓谷の岩壁上に生え、中部地方以北の本州、北海道、および千島に分布する。名は、花がカラマツソウの仲間に似ており、葉がモミジのようであることによる。カラマツソウ属との直接的な類縁関係はない。

[門田裕一 2020年3月18日]


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