イタリアの解剖学者、病理学者。フォルリに生まれ、ボローニャ大学で医学を学んだ。マルピーギの弟子バルサルバAnton Maria Valsalva(1666―1723)に師事して解剖学の研究を始めた。1711年パドバ大学に転じ、1715年から五十数年間にわたり解剖学の教授を務め、その名声は早くから全ヨーロッパに知れ渡っていたという。晩年の著書『疾病の所在と原因について』De sedibus, et causis morborum per anatomen indagatis(1761)は、古来の液性病因説を退けて器官病理学を確立し、近代病理学、病理解剖学を基礎づける名著となった。とくに臨床症状の綿密な観察と、精密な解剖所見とを対応させた功績は大きい。ほかに『解剖学草稿』も著している。
[澤野啓一]
イタリアの医者。ボローニャ大学で医学を修め,卒業後バルサルバAntonio M.Valsalva(1666-1723)に師事して解剖学を専攻し,1706年《解剖学雑記》を公にした。11年にパドバ大学教授となり,終生その職にあり,門下から多くの有能な解剖学者が輩出した。名著《解剖によって明らかにされた疾病の位置および原因》(1761)は病理学全般にわたり,自己の観察を書簡式に記録し,臨床観察と対比したもので,英・独・仏語に翻訳された。病理解剖学をうちたて,“近代病理学の父”といわれる。また歴史家,哲学者でもあった。
執筆者:古川 明
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…そして,収容されている患者が不幸にして死んだときは,解剖することによって生前の症状と対比できる。すでにイタリアのG.B.モルガーニは,この方法によって経験を重ね,その成果を《病気の座と原因について》(1761)と題する著書として発表している。解剖によって,病気の位置が確定できるのである。…
…頭蓋の外形をみればその人の性格や精神的特性がわかるという学説で,19世紀前半の欧米で大いに流行した。創始者はドイツで生まれウィーンで開業していた医師F.J.ガルで,彼はイタリアの解剖学者モルガーニの影響下に,幼児や成人の正常脳,各種の病気の人の脳,天才人の脳,動物の脳などを比較研究し,脳内にさまざまな〈器官〉を発見し,これにもとづいて独特の〈器官学Organologie〉を打ち立てた。この理論の概略は,(1)脳は精神の器官であり,(2)精神はそれぞれ独立した機能に分かれ,(3)これらの機能は脳の皮質に座をもち,(4)頭蓋骨の形と脳皮質の形との相関はきわめて高く,(5)したがって,頭蓋骨の輪郭と精神機能の特性との間には密接な対応がある,の5項目に尽くされる。…
…ルネサンスを迎えて,中世の束縛から解放されて解剖学が開花し,その蓄積をまって初めて病理学が展開されたのである。そして現代における病理解剖学を樹立したのは,18世紀のイタリア,パドバのG.B.モルガーニである。彼に至るまでフェルネル以降,病理学の展開にはみるべきものは少ないが,この間,医学の発展に貢献した学者には,解剖学のA.ベサリウス,顕微鏡家のM.マルピーギ,血液循環論のW.ハーベーらがいる。…
※「モルガーニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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