モレリ(英語表記)Giovanni Morelli

改訂新版 世界大百科事典 「モレリ」の意味・わかりやすい解説

モレリ
Giovanni Morelli
生没年:1816-91

イタリアの美術史家。ベローナ生れ。ミュンヘン医学解剖学)を学ぶ。美術史の著述を始めたのは元老院議員になった1873年ごろ以降で,最初の数年間は本名アナグラムであるロシア風のペンネーム,イワン・レルモリエフIvan Lermolieffを使った。当時流行の科学的実証主義基盤として,絵画作者決定(鑑定)を完全に科学的方法によって行おうとした。具体的には,彼は画中人物の耳や指など造型的に比較的重要でない部分に画家の癖や様式が表れるとし,それによる作者決定(いわゆる〈モレリ式鑑定法〉)を試みた。現在ではその方法を全面的に応用する研究者はいないであろうが,補助的に援用するかぎりにおいては,今なお有効性をもつ。主要著書に《イタリア絵画の批評的研究》(1890-93)がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モレリ」の意味・わかりやすい解説

モレリ
もれり
Louis Moréri
(1643―1680)

フランス人で、カトリック僧職にあった博学の人。経歴は明らかでないが1674年に『歴史辞典―聖俗歴史の奇事雑纂(ざっさん)』Le Grand dictionnaire historique, ou le mélange currieux de l'histoire sacrée et profaneを著し、著名な事項、ことに珍しい事項を取り入れ、アルファベット順に初めて配列した。従来の分類によるものより捜しやすいので喜ばれ、彼の死後1759年には20版が発行されたが、これはプロベProvet編10巻であった。V・ユゴーは歴史小説にこの事典を多く用いている。また、フランスのプロテスタント哲学者ベールはモレリの『歴史辞典』に倣って、1697年に『歴史的批評的辞典』Dictionnaire historique et critique三巻を著した。

[彌吉光長]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モレリ」の意味・わかりやすい解説

モレリ
Morelli, Giovanni

[生]1816.2.25. ベロナ
[没]1891.2.28. ミラノ
イタリアの政治家,美術評論家。ミュンヘン大学その他で医学を学んだ。1848年のロンバルディア革命で義勇団長として活躍。1873年には上院議員となり,1874年以降ミラノに定住。宗教団体や公共組織所有の美術品の売買を禁止し,公共物として国家で保護する法案を通過させた。また解剖学によるルネサンス絵画の人体分析「モレリ式美術鑑識法」を創案。死後,美術収集品はベルガモに遺贈された。主著『イタリア絵画の美術評論的研究』Kunstkritische Studien über italienische Malerei(1890)。

モレリ
Morelli, Domenico

[生]1826.8.4. ナポリ
[没]1901.8.13. ナポリ
イタリアの画家。反アカデミズム運動の影響を受けて,自然主義的傾向を発展させた。主としてナポリで活躍。中東風俗や印象派的な色彩を取入れて,詩的幻想の豊かな神秘的宗教画を描いた。

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百科事典マイペディア 「モレリ」の意味・わかりやすい解説

モレリ

イタリアの美術史家。ベローナ生れ。初期にはイワン・レルモリエフIvan Lermolieffというロシア名のペンネームを用いた。医学や解剖学を学んだのち,元老院議員になった1873年ころ美術史に転じ,特にイタリア・ルネサンス絵画を研究。当時流行の科学的実証主義にもとづき,画家の特色や個性は,人物の耳,指,爪などに無意識的に現れると考え,作者の決定や真偽の鑑定にはこのような点を重視すべきであるという独自の〈モレリ式鑑定法〉を提唱した。主著に《イタリア絵画の批評的研究》(1890年―1893年)がある。

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世界大百科事典(旧版)内のモレリの言及

【鑑定】より


[欧米]
 真贋問題も含めた鑑定の歴史は西洋ではルネサンス時代にさかのぼるが,しかし近代的な意味での鑑定が行われ始めたのは,美術館が整備され,その所蔵品の整理,研究,あるいはカタログ化が盛んになり,また美術史そのものの研究が飛躍的な展開を見た19世紀後半からである。イタリア人のG.モレリはその最初の重要な人物で,いわゆる〈モレリ式鑑定法〉の創始者として知られる。これは,画家の様式的・技法的特色,いわばその筆跡が最も端的に現れるのは人物の目,耳,手足,爪などの細部であるとし,この部分を重点的に比較研究する方法で,B.ベレンソンにも影響を及ぼした。…

※「モレリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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