ユネスコスクール(読み)ゆねすこすくーる(英語表記)associated schools of UNESCO

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユネスコスクール」の意味・わかりやすい解説

ユネスコスクール
ゆねすこすくーる
associated schools of UNESCO

1953年に発足した、ユネスコ国連教育科学文化機関)の理想を実現するため、ユネスコ憲章に示された理念学校現場で実践し、国際理解教育の実験的な試みを比較研究し、その調整をはかるネットワーク。国際的には、ASPnet(Associated Schools Project Network)とよばれる。設立当時は15か国33校であった。2010年1月時点の加盟校は、179か国約8500校。日本からは、2010年(平成22)3月の時点で、154校の幼稚園、小・中・高等学校および教員養成学校が参加している。加盟している学校ではESD持続可能な開発のための教育)が実践されている。特定の授業科目があるわけではない。

 ユネスコスクールの基本テーマには、以下の四つがあり、日本では事務局機能やネットワーク機能などを委託されている財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU:Asia-Pacific Cultural Center for UNESCO)の支援と協力によって、活動が推進されている。

(1)地球規模の問題に対する国連システムの理解 貧困飢餓失業識字、文化理解、性差、人口問題等の世界的な問題からテーマを選び、自分の地域や国、国際的などの側面から、調査を行うこと。

(2)人権民主主義の理解と促進 「世界人権宣言」「児童の権利に関する条約」等を出発点として、児童・生徒・学生たちの自らの経験のなかから、他者の権利だけでなく義務や責任(人種差別偏見、民主主義、相互の尊重、市民の責任、寛容と非暴力紛争等、人権に関連する問題)について意識を広げさせること。

(3)異文化理解 他国の児童・生徒・学生たちまたは両親、自国民、移民集団、大使館、他国の文化センター等と連携を取りながら、異なる習慣、伝統、価値観に対する理解を促進すること。

(4)環境教育 自分たちが住む地域が直面している環境問題(汚染、エネルギー、森林保護、海洋および大気に関する研究、土壌侵食、天然資源保護、砂漠化、温室効果、持続可能な開発など)を検討し解決の手段を考えるとともに、科学が人類の将来に果たす役割を考えること、である。

 こうした四つのテーマ以外にも、「自由に対する普遍的な尊重を助長するために教育、科学及び文化を通じて諸国民の間の協力を促進することによって、平和及び安全に貢献すること」というユネスコ憲章第1条に示されたユネスコの理念に沿ったものであれば、世界遺産教育など、他のテーマ設定も可能であるとされている。

 なお、ユネスコスクール支援大学間ネットワークがあり、日本では2010年5月時点で、12大学が加盟し、とくにESDの推進に関して互いに情報の交換を行いながら、多くの学校を支援できる体制づくりを目ざしている。

[篠原文陽児]

『ユネスコ「21世紀教育国際委員会」編、天城勲監訳『学習・秘められた宝――ユネスコ「21世紀教育国際委員会」報告書』(1977・ぎょうせい)』『吉田敦彦著『世界のホリスティック教育――もうひとつの持続可能な未来へ』(2009・日本評論社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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